【映画評】スター・ウォーズ/フォースの覚醒 --- 渡 まち子

映画ファンのみならず、全世界を巻き込んだ一大エンタテインメントの様相を呈している「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、エピソード7。A long time ago…で始まるテロップとおなじみの音楽が鳴り響けば、否が応でも胸が高まる。エピソード6から30年後の殺伐とした世界で、孤独なヒロインのレイと敵方の脱走兵士フィンを新キャラに、旧作の主要キャラクター、ハン・ソロ、レイア、チューバッカらがからんで、新たな物語が描かれる。ストーリーはあえて書かない(…というか明かすことは禁じられている)が、何しろ、今、現在の最高の技術を駆使して、映画史でも最も有名で人気の作品の新シリーズを紡ぐことは、決して簡単ではなかったはず。だが、「スター・ウォーズ」ファンを公言するJ・J・エイブラムス監督は見事にやってのけた。

「スター・ウォーズ」の物語のエッセンスは、善と悪の対立や、スピース・オペラ的活劇の楽しさなど。中でもドラマで重要なのは、親子関係だ。本作でももちろんそれは、悪役カイロ・レンを動揺させる要素として登場する。新ヒロインのレイにしてもいなくなってしまった家族を待っているという設定。ただ、レイの背景に関しては、まだまだ謎が多い。これは、今後、新シリーズの中で明かされていくのだろう。

一方で、悪の軍事組織(ファースト・オーダー)も、それに対抗するレジスタンス軍も、ともに探すのは、行方が分からない伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカー。レイやフィンにとっては、ジェダイやフォースの力は、すでに伝説としてしか認識されていない。この神話的感覚が、本作で初めて「スター・ウォーズ」に触れる若いファンの持つイメージと重なっているのがうまい。

いずれにしてもSF活劇の楽しさが十二分につまった極上のエンタテインメントだ。エピソード8と9の公開にはもう少し時間が必要だが、今からたまらなく待ち遠しい。
【85点】
(原題「STAR WARS: THE FORCE AWAKENS」)
(アメリカ/J・J・エイブラムス監督/ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライバー、他)
(興奮度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2015年12月26日の記事を転載させていただきました(動画はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。