1月1日のこのブログに「2016年はスイッチの切り替わりの際に大きな衝撃を伴うかもしれません。シートベルトはしっかり締めて新しい年に臨んだ方がよさそうですね」と記させて頂きました。正にその言葉通り市場が開けた初日から暴風雨状態が続いています。市場関係者や専門家からも様々な見方が出ていますが意見が割れている気がします。
一つはこれがクライマックスで急速な回復を見込む意見とこれは序章に過ぎないとする悲観的見方であります。そういえば円相場についても対ドルでアメリカの利上げに伴い円安が進むとみる筋と新たなステージ入りで円は高くなると見る筋に分かれました。今のところは後者の方に分があり、円安派だったミセスワタナベは苦戦を強いられているようです。
テクニカルには確かに下げ過ぎのような気がします。よって、市場は反転のきっかけを探すことになります。その唯一の理由として「行き過ぎた中国元安」の修正を中国政府が行ったということでしょうか?これは中国元が国内と海外で二重相場になっておりその両者の相場の乖離が進んだため香港市場で元を買い集め、そのギャップを埋めました。確かに目先の安定には繋がります。但し、中国元の国内相場も元安が継続しており、今回の中国政府の介入はあくまでもギャップ修正に留まっています。よって趨勢に変化をもたらすものではない点には留意が必要ではないでしょうか?
では、もう一つの悪玉、石油相場ですが、これは留まるところを知らないという感じになってきました。本日のNYでの一時30ドル割れは強烈なインパクトとなるでしょう。専門家は20ドルも近い、と発言していますが、これは石油の先物相場の規模が小さく市場全体が弱気に傾いていることから実勢以上に売られる可能性を示しています。石油相場は今や需給相場ではなく、単に先物がいたずらする「投機のおもちゃ」であって論理も実需もありません。あくまでも先物に対する売り姿勢を完全に打破できる「大発表」がない限り止まらなくなります。逆に言えばそのような発表さえあれば売り方は買戻しに動きますからとてつもない価格上昇に結び付くのです。
2008年7月に140ドルを超えた石油相場は2009年1月に33ドルをつけます。僅か半年の大暴落劇でした。今回はその時の安値を明白にブレークしましたので先が見えないという解釈に繋がってきます。但し、2009年の際には半年後の6月には70ドルを回復していたことも忘れてはなりません。
さて、思い起こせばアメリカが金融政策を変更し、金利を上げ局面に変える時は過去、必ずと言ってよいほど深刻な市場への影響がありました。イエレン議長はその教訓を生かすため事前調整を続け、ほぼ荒波無き利上げの実行を行ったと考えられていました。私もうまくやったとこのブログで書きましたし、イエレン議長ご本人も心地よいホリディシーズンを愉しまれたはずです。よって、年初からの中国元の顕著な調整はやや想定外だった可能性があります。
アメリカの利上げを元安の元凶と捉えたシナリオが綱渡りの中国経済運営に火をつけた、ということなのでしょうか?そうだとすれば調整は長引きます。よって、一時的な戻しはあってもそれが本格的で本質的なものではなさそうだと割り切らねばならないでしょう。
ところで原油安がここまで進むと国家破綻が懸念されていたベネズエラなど一部諸国の行方はどうなるのでしょうか?あるいはサウジの国家予算の赤字補てんの為の海外資産売却はより加速するのでしょうか?中国はその実力の底が見えてしまったということならば新中流層は今後、雇用を含め、安定感を失うのでしょうか?計画経済の共産党に於いてその計画は嘘で塗り固められた放言であることを改めて世界に見せつけてしまうということでしょうか?
それだけではありません。イスラム国問題は全く収まっていませんし、それを受けた難民は今や2000万人にものぼるとされます。100万人を受け入れた欧州は立派ですがそれは氷山の一角。そしてその難民たちが引き起こす問題がドイツあたりでは社会問題化しつつあります。アメリカはその一方でより入り口を絞る動きをみせ、カナダでは予定された数の難民が入国してきていません。(これは入国プロセスなど技術的な問題だと認識していますが。)実に混とんとしていると言えます。
カナダからは中央銀行の利下げの可能性が再び持ち上がってきました。アメリカも先日の雇用統計は良かったもののほかの指標は総じて冴えず踊り場的状態になっているように見えます。経済の運営、かじ取りは非常に難しいように見えます。そして専門家の予想がばらばらであることが何よりもその先行きが見えないことを暗示しているのではないでしょうか?
但し、いつまでも下がり続けるものもありません。世の中、どんなものでも「うねり」がありますからその変わり目を見て取る努力は続けなくてはいけないと思います。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月13日付より