アメリカの利上げ政策に変化はあるのだろうか?

12月に利上げに踏み切ったアメリカFRBの議長、ジャネット イエレン氏のボイスがあまり出てこなくなりました。年末まではうまくいったのに年明け早々の市場を襲う激震で頭が痛いことでしょう。利上げ決定の際、FRBの2016年の描くピクチャーとしては大体年4回、利上げし、合計1%金利を引き上げるというものでした。

これに対して専門家でこれをまともに信じる人はほとんどいなかったと記憶しています。多くの予想はせいぜい年2回というものでした。一部には利下げを再検討せざるを得ないという意見もありました。

利上げに踏み切った最大の理由は雇用情勢の回復でした。しかし、FRBの最も注目する政策は雇用と共にインフレ率であります。そのインフレ率は低迷したままで目標の2%には程遠い状態が続きます。その上、底が見えない原油価格にインフレ率はドル高も手伝い、更に低下する様相を見せています。

そんな中、カナダでは次回の中央銀行政策会議で利下げするのではないかと囁かれています。利下げオッズは6割程度まで上昇し、カナダドルは対ドルで更に売り込まれています。

今、カナダに来れば物価が高くてびっくりするでしょう。輸入物価が上がり続けているからです。カナダではメードインカナダが少なく、アメリカからの輸入製品が大きな比重を占めます。小売業者はカナダ向け価格を設定するにあたり現実の為替レートに更に安全比率をかけるためとんでもない価格が出来上がってしまいます。例えばバンクーバーとトロントのガソリン価格がかなり違う理由を知る人は少ないでしょう。確か、トロントではリッター当たり1ドルを切っているかと思いますが、バンクーバーではせいぜい1.15ドルぐらいだと思います。理由はトロントのガソリンはカナダ製ですが、バンクーバーのガソリンはそのほとんどをアメリカから輸入しているからであります。つまり、石油価格が下がっても為替が悪化し、ガソリン価格が下がらないのであります。

カナダの重質油は1年半前にはバレルあたり80ドルを超えていましたが、今や8ドルを切っています。10分の1の価格で黒字になるところは一社もないと言われています。資源国の性であり、厳しさは一掃増しています。これぞ本当の近隣窮乏化なのでしょう。

最近、私は金利政策に無理が生じつある気がしています。カナダが利下げをすることが本当に正しいのか、という疑問を感じています。金利が下がりカナダドルが弱くなれば海外からの不動産投資に更に拍車がかかり一部の不動産は中国顔負けの上昇率を呈しています。2016年のバンクーバー地区の固定資産税評価額は一様に10-20%上昇しています。私の知り合いの戸建の家は25%上昇し、持ち主は怒り狂っていました。これは景気がイマイチなのにマネーが作り出す市場価格の結果、一般人の手が届く住宅は郊外のコンドミニアムだけになってしまいます。これは金融政策が作り出した歪も大きいでしょう。

アメリカがさらに利上げを進めればその歪は世界各国に同様の苦しみを与えます。そしてアメリカの利上げを継続する本来の理由、景気がヒートアップしているという状況からは程遠い気がします。各種経済指標はこのところ雇用統計以外は失望させるものばかりです。自動車販売もそろそろピークアウトの感があります。

私の見立てではアメリカにおける今年前半の追加利上げはないと考えています。下がり行く株価も景気を下押しする重要な懸念材料です。そしてそれ以上にドル高が招く弊害がより強まっているということでしょう。以前から主張しているようにアメリカとドルと基軸通貨というコンビネーションはそろそろ変わらなくてはいけないと考えています。ユダヤ財閥がドル基軸を推し進めている為これが簡単に変わらないのは分かっていますが今後は通貨バスケットを基にした仮想通貨も発想の一つになるのではないかと思います。

フィンテックの技術は仮想通貨も含まれます。これが進化することでドル基軸という歪んだ金融を修正することでマネーだけが先行する現代の市場に変化をもたらさねばならないでしょう。アメリカという国が読みにくくなっただけにそれに連動する金融政策にもやや斜に構えなくてはいけない時代になってきたかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 1月20日付より