今日は若干戻したものの原油価格の下落が止まりません。特に今週に入りイランからの原油輸出がいよいよ現実のものになることで下落に拍車をかけた感もあります。相場のことは相場に聞け、ですので下手な予想は出来ませんが、個人的には下げ止まりは近いとみています。
中国の成長鈍化を理由にした原油安とされますが、それだけでは100ドルを超えていた原油が4分の1近くまで下げる論理的理由にはならないのではないでしょうか?私は原油安の引き金はズバリ外交と金融政策の二つが主因だと考えています。
まず、外交ですが、これはウクライナ問題に端を発したロシアの孤立化がきっかけではなかったかと思います。ロシアは欧米からの経済制裁で自国の経済運営に支障をきたしたため、石油やガスなどを売りまくることでこれに太刀打ちしようとしました。以前触れたかと思いますが、原油の様にどこの産品でも差別化が出来ない場合、フェアシェアの原則からロシアの産油量増大は産油国の市場占有率のバランスを崩すことになります。この為、他の国もそのシェアの維持の為に増産に走らなくてはいけないという割と単純な理由が増産の主因ではないかとみています。OPECで減産の合意ができないのは非OPECの産油国がその生産を調整する意思を見せないからです。
ところがここまで安くたたかれるといくらなんでもやりきれなくなる国は出てきます。アメリカのシェールをみると1月15日現在のシェールのリグの数は650本で前週より14本、昨年末に比べ48本(6.9%)減っています。一年前は1676本あったので実に61%も減少しているのです。これは一部のシェールでは技術改良が進み、コスト減が進んでいるのですが、良質のシェールばかりではないことと多くのシェール開発業者は弱小で財務基盤が乏しく資金調達に苦慮している為であります。金融機関はシェールへの貸付を厳しくしていると聞いています。
つまり淘汰が進みつつある点は考慮すべきでしょう。勿論、イランの原油輸出再開は上述のフェアシェアの理論からすれば不都合ではありますが、これ以上の安値は産油コストの問題ではなく、産油国の財政の問題となりますので一定の減産妥結が図られる可能性が見えてきます。例えばOPECの臨時総会を2月か3月にでも、という声が出ているのは正に留まるところを知らないこの相場にサウジを含め、勝者なき戦いに終止符を打ちたいという真の声のように感じます。
とすれば原油の供給面についてはロシアを締めあげた欧米がそのとばっちりを受けたということでしょうか?もちろん、アメリカのシェール開発もその一因ではありますが。
もう一つの金融政策の面からはやはり、マネーゲームで釣り上げられていた原油相場だったことが言えそうです。今、原油相場に「ニューノーマル」が指摘されています。つまり100ドルという常識を○○ドルまで下げる訳です。これが70ドルなのか50ドルなのか30ドルなのか分かりません。が、仮面が剥がれた今、その落としどころを探すのに懸命なのでしょう。個人的には50-60ドルあたりが妥当だとは思います。中国の成長は鈍化しても東南アジアやインドなど人口を抱えているこれからの国々はまだたくさんあり原油の健全な需要はまだあるはずです。よって、20ドル台が定着するとは考えにくいとみています。
石油メジャーによる新規の油田開発も止まりつつあることが更に原油安にブレーキをかける可能性があります。よって、今の安値は最終局面に差し掛かっていると考えた方がよいと思います。チャート的にはこの突っ込みはセリングクライマックスに見え、どこかで急反発するエネルギーが蓄えられつつあるように感じます。
繰り返しますが、今の相場は需給相場ではなくマネーゲームと化した投機であって誰もその行方は分かりません。が、相場には必ず反転がつきものでそれは往々にして狂気の乱舞(この場合は下落ですが)の後、宴は終わることになっています。
数か月後には「あの時は酷かった」と思い出話になっていると私は期待しています。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月22日付より