次の不況はどんな不況だろうか?

不吉な表現ともされる英語の「F」ワード、不況の足音が迫ってきていると言われています。

直近の我々が経験した厳しい状況は2008年のリーマンショックでしょうか?日本人にとっては民主党時代の経済運営のかじ取り失敗に震災の影響もあった2011年から12年を思い起こす方も多いかと思います。安倍政権になってから確かに明るさは取り戻しました。ちなみに私はアベノミクスを一部の人が言うほどボロクソに言うつもりは毛頭ありません。多くの批評家は自分がステージの上に立っていないので好きなことを言えるわけで「では、あなた、やってみなさい」と言われれば99.9%の人は困り果ててしまうでしょう。多くの勇ましい批判は物事をどちらから見るか、という視点の問題もあるわけですし、ごくピンポイントの不備を鬼の首を取ったように言うコメントには辟易としてしまいます。

さて、今日のテーマの「次の不況」でありますが、個人的なイメージとしてはあふれたマネーの処理の仕方に端を発する気がします。私はマネタリストと称する人たちの金融の調整機能による経済運営には一定の限界があると思っていますが、今、その運営の結果、溢れたマネーへの対応が最大のポイントとなってきています。

不況が起きやすい直接的原因は市場のマネーを利上げにより収縮させようとするアメリカの動きにあります。

経済学部で経済原論を勉強すると一年生の時にこんなことを習うかと思います。「あなたの給与は毎年上がり続け、その結果、生活水準もそれに準じて良くなりました。ある日、会社からあなたの給与はこれから3割減です、と言われたのですが、あなたの支出は3割減とならず、借金を重ね、両親や親せきからお金を借りることになりやすくなります」と。

もっと分かりやすい例をだしましょう。逮捕された清原容疑者はほとんど仕事もしていないのになぜ、昔の栄光に浸り続け、六本木などで豪遊をし、月60万円もする高級家具付きマンションに住み続けていたのでしょうか?なぜ、収入に合わせて支出を減らせないのでしょうか?

これはカラダが覚えてしまっているからなのです。今、50代から上の人は今でもかなり物欲が高いはずです。自称グルメの人も多いでしょう。モノを買い、新しいレストランにまず行くのは新製品や新しいお店をみると条件反射で買い、食べるという行為を覚えているからなのです。新聞の通販の宣伝をじっくり見たことがありますか?ほとんどが高齢者好みのものばかりでしょう。午前4時台、5時台の番組はテレビショッピングが多いのは単に放送するものがないだけではなくて消費が好きな高齢の方が朝早く目が覚めて観てしまうこともあるのです。

中央銀行は長年、市場をマネーでジャブジャブ状態にしました。今でも日欧の中央銀行はそれを続け、もっとジャブジャブにしようとしています。これは国民にお金はいつでもどこでも手の届くところにある、というパーセプションを与えてしまいました。結果、「欲しければいつでも買える」という消費者行動を生み出したことも事実であります。その一方で、高齢者で貯金の金利収入を生活の糧としていた方のライフをすっかり変えてしまいました。

さて、アメリカはそれを逆回転させようとしています。国民はそれについて行けるでしょうか?私の上述の例で行けば「国民はそこまでソフィスケーテットではない」ということになるのです。言い換えれば国民はその変化に調整できず、その結果、経済活動に変調が現れ、不況が起きる、ということではないかと思います。

たぶん、何処の経済関係の雑誌や本を読んでもこのような説明のアプローチを見ることはないでしょう。ですが、これは紛れもなく経済学部の一年生が習う経済の基礎なのです。が、多くの専門家はより深い専門領域に入り込み、細かい分野でああでもない、こうでもないと議論をするのですが、大局的にみるとこう言うことではないでしょうか?

リーマンショック直後、私はこのブログで「アメリカではこれからダラーショップが流行る」と予言しました。的中していたはずです。理由はアメリカは不況時、従業員の首を斬るため、上述の給与の3割減では済まず、収入がなくなります。しかし、消費大国の国民にとって消費を愉しみたいという希望を叶えてくれるのは100均になるはずだ、と読んだのです。今でも日本の100均で数千円も買う方を時たま、お見かけします。あれは典型的なストレス発散買いで家に持って帰っても自分で使うことはない気がします。

今から起きる不況とは分かりやすい極論をすればシャツを1年でポイするのではなく、2-3年着て頂戴、というようなものです。「耐えられない!」という悲鳴が聞こえそうです。シャツはそう簡単に破けないことを考えれば、節約をすることに我慢ができないという消費者のマインドの問題とも言えそうです。

つまるところ、次の不況は民が我慢することを苦と思わなければFワードはない、とも言えるのでしょうか?なんとも微妙であります。

では今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月8日付より