真田昌幸の「あほロアー戦略」

どうも新田です。発売からもうすぐ3か月の拙著「ネットで人生棒に振りかけた!」ですが、金曜夜に久々の書評記事を「Suzie」さんというメディアで掲載いただきました。ありがとうございます。拝読して思い出したのですが、拙著では「真田丸」に絡めたネタも仕込んでおりまして、先週のオンエアで描かれた本能寺の変から始まる甲信越のカオス状態こそ、まさにタイトルの真骨頂でした。

そもそも、「あほロアー戦略」とは何か?産業のライフサイクルが人間の一生よりもどんどん短くなり、そう遠くない将来、人工知能に雇用も奪われる話が出るなど、人類史上かつてないほど変化の激しく、先が見えない時代に私たちは生きております。そんな時、まあ、堀江さんみたいな先を見通す「天才」なら自分で新しい仕組みを作ったり、変化の波にうまく適合したりして生き残っていけるのでしょうけど、私のような「その他大勢」の「凡人」はそんな眼力も才覚ないので、どうしても右往左往するしかありません。

なので、私なりに考えた凡人なりの生存戦略として、自分を「アホ」「凡才」だと割り切って自覚し、時代の先読みができるイノベーター的な人材を友人や取引先にして、徹底してフォロー(後追い)することに勝ち筋を見出すことにしたわけです。そんな生き残り策を、わかりやすく、皆さんに伝えようと、「あほ」と「フォロワー戦略」をかけ造語したのが「あほロアー戦略」というわけです。でも、人口に膾炙せず、己の発信力とプロモ不足に忸怩たる思いです。

そこで真田昌幸=写真は昌幸役の草刈正雄さん、NHKサイトより=が出てくるのは、なんだか唐突に思われましょうが、先人たちの歴史の中でも変化の激しかった戦国や幕末のような時代に参考になる立ち回り方、生き方があったのではないかと探したわけですが、戦国好きの私的には、まさに「あほロワー武将」に認定したくなった武将が3人おり、その1人が真田昌幸だった次第です。

先週放送の第5回「窮地」では冒頭に本能寺の変が勃発。武田家滅亡後からわずか数か月で、信長に巧みに取り入ったはずの昌幸は、信長の突然の横死で一転して真田家や小県の国衆がどうするか岐路に立たされます。

「新選組!」や「清須会議」に代表されるように、三谷脚本の時代劇は史実を描く場合でも、どこぞの民放のお正月時代劇のように総花的に逸話を散りばめるのではなく、事件の焦点を絞り、人々がどのような喜怒哀楽を繰り広げたのか、同時代性を再現するところが真骨頂。まさにこの回でも当上人物たちが本能寺の変の直後のカオスに翻弄される様を描いていて、象徴的だったのが徳川家康のセリフ。

近畿での物見遊山中に変を知った家康が三河への脱出ルートを家臣たちと協議した際、史実の「伊賀越え」をいきなりは選択せず、「逃げ道なんてないではないか!これより、京に上り、上様(信長)をお救い申し上げる」と、狼狽しまくり。家臣にたしなめられるあたり、「その時代に生きていたらそう思うよな」と、リアリティーを感じさせます。実際にそんな発言をしたかは置いておいても、それくらいの驚天動地な事態だったはず。当然、織田の残存勢力、北条、上杉に取り囲まれた真田家のような小領主にとっては、どこに付くか文字通りの生存戦略が試される展開になります。昌幸も、せっかく織田方に領地を献上してまで付いたのに、あっさりクーデターでやられたことに苛立ちを抑えきれず、つい当たり散らしてしまい、「下町ロケット」ばりに、大企業の事情に翻弄される中小企業の社長を彷彿とさせます。

拙著でも書きましたが、史実では、織田軍の撤退で権力の空白地帯になった信州を舞台に徳川、上杉、北条のパワーバランスを睨みながら、付かず離れずで外交戦術を駆使して領土を保全。この間、徳川と紛争した際には巧みな用兵術と籠城戦で敵の大軍を撃退し、豊臣政権下で独立大名として頭角を表していきます。まあ、ドラマ的には、生き残りの代償として、主人公の信繁が上杉や豊臣に人質として送られる不遇の時代もどう描かれていくのかも見ものでしょうが、昌幸視点、つまり経営視点に立ち返ると、「あほロアー戦略」を駆使して、アライアンス先をのらりくらりと変えつつも、どのように着実に版図を広げて行ったのか、その智謀ぶりの描かれた方や、草刈さんの好演が期待されるところです。

ちなみに、昌幸以外の「あほロワー武将」は一体誰なのか?戦国好きの方なら、ご想像が付くかもしれませんが、残り2人の名前は書籍で読んでくださると嬉しいです。
ではでは。

<関連記事(個人ブログ>
・私大文系学生向け「あほロアー」戦略
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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