トルコ・シリア情勢を見るために、去年の7月に作った地図帳を再掲します。
現在のシリア北部情勢は、クルド人民兵YPG(民衆防衛部隊)が、飛び飛びだったクルド人が多く住む地域を、周辺のそうでもない地域を含めて制圧して一体化していることが重要。
従来からトルコは「飛行禁止区域」を設けよと主張してきた。建前上は、アサド政権の空爆から逃れる市民を保護するため。確かにそれは今大問題であり、対処しなければいけないというトルコの議論の筋は通っている。
しかしトルコにはトルコの戦略的な目的があり、主張する飛行禁止区域の実態は、クルド人勢力の支配地域を分断し、トルコにとっての影響力を行使できる回廊を確保しようとするものでもある。地図の黒・白の点線で囲まれたエリアがトルコが提案してきた飛行禁止区域である。ここをめぐる戦況で、今大きな変化が起きている。今月初め以来のロシアの空爆強化とアサド政権を背景に、YPGが支配地域を拡大して、ほとんど失われようとしている。
トルコの主張する飛行禁止区域が狭まる中で、アアザーズが最後の孤塁だったが、これがクルド勢力に抑えられそうになったのでトルコは強く反発している。
反政府勢力はというと、「イスラーム国」あるいはヌスラ戦線に合流する可能性が高い。過激派の勢力はむしろ増強される可能性がある。
関連リンク;池内恵『中東・イスラーム学の風姿花伝』
【地図】トルコはシリア北部の「安全地帯」でクルド勢力分断を図る
編集部より:この記事は、池内恵氏のFacebook投稿 2016年2月18日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された池内氏に御礼申し上げます。