救急救命士はいらない

川崎の老人ホーム、Sアミーユ川崎幸町における、老人転落死事件の容疑者は、医療専門学校救急救命学科を卒業し、国家試験に合格し、救急救命士免許を持っていた。

救急救命士だったら、本来は、救急車に乗って、救急業務をやっているはずである。しかし、彼が就いた職は、老人施設の介護職だった。救急救命士だからといって、特別手当はない。無資格の介護職とまったく同じ待遇で勤務していた。老人施設内で行う基本的な救命処置は、研修を数十時間受けただけの介護職でもできるからである。


救急救命士とは、救急救命士法で規定される国家資格である。独占業務は、救急救命処置であるが、厳しい限定がついている。

救急救命士法
第四十四条
2  救急救命士は、救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び第五十三条第二号において「救急用自動車等」という。)以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は、この限りでない。

要約すれば、救急救命士は、「救急車に乗せる直前か、救急車の中でしか仕事をしてはいけない」という資格なのである。当然、救急救命処置を行うには、消防官でなければならない。実際に仕事をしている救急救命士の大半は、消防官として採用されてから、消防学校に入り、救急救命士免許を取る。医療専門学校を出て、救急救命士免許を持っていれば、消防官採用試験では有利だろうが、採用される保証はない。

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消防官ではない救急救命士は無用である。仕事として救急救命処置をしたら、医師法違反になるからだ。

医師法
第十七条  医師でなければ、医業をなしてはならない。

救急救命士は、消防官でなければ使いみちのない資格だから、国家資格である必要がないし、まして、民間の医療専門学校で取得すべきでもない。

救急救命士は、資格自体が不要なのである。

井上晃宏 医師