報道によれば、2015年の国勢調査速報で大阪府の人口が883万8908人と5年前と比べて0.3%減少したそうです。これは、第2次世界大戦の影響で人口減少した1947年の臨時国勢調査以来68年ぶりとの事。東京の一極集中に拍車がかかっていることを示しているのでしょうか。
もう少しミクロにデータを見ていくと、意外なことがわかります。例えば別のサイトで紹介されていた、2015年の転入超過自治体ベスト10というデータを見ると、大阪市は人口流入超過数では日本一の市町村になっているのです。この数字は転入転出数だけのデータですから、人口増減とは必ずしも一致しませんが、都市の人気を示すバロメーターとして参考になると思います。
1位 大阪市(大阪府)+11,662人
2位 福岡市(福岡県)+8,880人
3位 札幌市(札幌市)+8,173人
4位 川崎市(川崎市)+7,869人
5位 名古屋市(名古屋市)+7,276人
6位 さいたま市(埼玉県)+6,921人
7位 世田谷区(東京都)+6,164人
8位 江東区(東京都)+5,163人
9位 品川区(東京都)+4,911人
10位 板橋区(東京都)+4,715人
大阪府の中で、転出が増えて人口減少しているのは、工場のあるエリアが中心です。中小製造業が集積する東大阪市や、大手メーカーの国内業務縮小の影響を受けた門真市では人口が減っていますが、大阪市や吹田市など10の市町では人口増加しているそうです。大阪府の中でも格差が生まれているのです。
逆に、東京都は都道府県で見ると圧倒的な人口流入となっている自治体ですが、人口流入超過数の上位に入っているのは、世田谷区、江東区、品川区、板橋区と東京23区ばかりです。調布や府中といった23区に近い自治体は人口流入しているようですが、さらに奥に行くと人口が減少しているエリアが増えていると思います。
都道府県で人口動態を観察すると、東京、愛知、千葉といったいくつかの都県しか人が流れ込んでいないように見えますが、市町村レベルで数値を見るとまた違った情景が見えてきます。
人口が増えている東京都でも多摩地区の一部では人口が減っているし、逆に人口が減っている大阪府でも大阪市のように転入超過数日本一という市があったりするのです。
都合の良いデータだけを見せられて、思い込みで判断すると、事実と異なる結論を信じ込んでしまう。そんな罠に陥らないためには、元データに当たって、自分で検証してみることが大切です。
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※内藤忍、株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年2月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。