日本政府は仮想通貨を「貨幣」として認めることを発表しました。これは金融とITの技術融合であるフィンテックの開発に弾みがつくとされています。
ところでこのところの世界経済の不安感台頭でスポットライトが当たっているのが金(ゴールド)であります。何故でしょうか?
仮想通貨と金は共に大きな共通点があります。それは国家の色に影響されないということであります。
世の中の一般的な通貨は全てある国家や組織が発行するものであり、その通貨はその国や集合体の経済流通潤滑の為の血液の役目を果たしています。本質に立ち返れば、国内で経済情勢をみながら貨幣の流通調整を行っているうちは問題がありませんが、一旦、他の通貨を使い他国との貿易が行われるようになると「どちらの通貨を」「どの比率で」貨幣として認識するのか当然、調整が必要となります。今は多くの主要通貨は市場がその為替レートを決定しますが、その昔は金や銀が介在していました。
今、世界の通貨を俯瞰すると何故だか、米ドルが基軸通貨として君臨しています。その昔は英国のスターリングポンドでありました。なぜ、基軸通貨となったかいえばより政治力、経済力、発言力などの総合的影響力によってそのポジションを作り上げたともいえます。覇権国家故の通貨流通力を武器に神通力を持たせ、多くの途上国や経済不安を抱える国の自国通貨の代替的信用の役割も持つことができる通貨であります。
その昔、ソ連とアメリカが冷戦状態だったころ、私がモスクワで買い物するのはドルショップでありました。そこに行けばモノがあります。ソ連も外貨=ドルが欲しかったのでしょう。ソ連の通貨であるルーブルを握りしめても商品は何処にもないし、当時は一部ではまだ配給券でモノを貰う仕組みでした。日本にも戦時中、配給券でコメなどを貰っていました。
今週末開催されるG20では乱高下する為替について議論がされることにはなっていますが、その対策について「画期的なものはなさそうだ」というのが事前に漏れ聞こえてきます。為替がなぜ、乱高下するのか、これは自国経済の実態を反映する時代から国情や政治、更に地政学的リスク、地球儀ベースでの思惑など非常に多くのファクターが絡み合うようになったためでしょう。
例えば英国がEUからの独立賛否を問う国民投票が行われるとなぜ円が買われるのか、それを論理的に説明せよ、と言われてもあれっと思うでしょう。私の数日前のそのトピックスのブログの最後に、「この国民投票は円高を招く」という趣旨のことを書きました。事実、そうなっています。
但し、基軸通貨であるドルを中心に潮の満ち引きのごとく為替は動くという基本構造は変わっていません。アメリカはなぜ基軸通貨の地位を欲しがるのか、といえばその特権である「どれだけ財政赤字、貿易赤字になってもアメリカは潰れない」という点が最大のポイントでしょう。アメリカがドル基軸通貨を手放した瞬間、アメリカの地位は崩壊する可能性があるとも言えるのです。
つまり、多国間で交換する通貨とは常に発行国の事情が伴う点に於いて不完全貨幣であります。それを補うのが万国共通の通貨であり、発行母体が影響を受けにくいものとなります。歴史的にその代表が金でありました。世の中が不安定になればなるほど輝きを増すのが金とも言えましょう。
仮想通貨はそれに近い性格を持っているとも言えます。但し、私が今一つ不完全だと思うのはその通貨の価値が不安定である点です。例えばビットコインの場合、2014年1月6日に638ドルをつけたものの2015年1月1日には214ドル、16年2月1日には423ドルとなっています。現在世界7000店で使えるとするこのビットコインは一年でその価値が倍半分になるわけでそれをもとに購入する商品価格もそれだけ乱高下することを意味します。よって日本政府が通貨として扱ったとしてもその汎用性はまだまだだという気がします。
私が折々主張する通貨バスケットによる新たなる基軸通貨創生はそのあたりを補完でき、為替の作用、反作用を相殺する機能が備わると考えています。
通貨とは限りない信用を付保させることで機能します。例えばエアマイルは原則、その航空会社がつぶれない限りの保証であり、必要マイル数は予告なしに変えられるわけですから本質的な意味での仮想通貨とは言えないと思います。
多分、仮想通貨については今後相当、意見やアイディアが出てくるものと思います。面白い可能性を秘めているとは思っています。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月25日付より