米シェール生産が阻害されたら!?

岩瀬 昇

何かと話題の米大統領選。

3月6日(日)に行われた民主党候補者による公開討論会で、トップを走るヒラリー・クリントン元国務長官と二番手で追うバーニー・サンダース上院議員が、共にシェール生産に不可欠な「水圧破砕法の規制」に言及した。

この記事を読んだ時には、どうせ選挙対策としてのpopular policyで、まず実現することはない、と判断していた。だから、弊ブログで取り上げるほどのことではないだろう、と。

と、思っていたら、関連のニュースを日経が今朝「[FT]米シェール開発規制は筋違い」と題して翻訳記事を掲載していた(3月10日6:30)。社説原文は “More heat than light in fracking debate“ と題して、3月8日(火)6:17pmに掲載されている。

日本語なので要約する必要もないと思うが、要は両候補者の発言の実現可能性が低いことと、もし実現したら「サウジアラビア」は喜ぶが、「アメリカ」は手ひどいダメージを被る、選挙対策とは言え、このような議論がまかり通るのは、石油ガス産業が正しいメッセージを送れていない証拠だ、云々、という内容である。

現在アメリカでは原油も天然ガスも、半分以上がシェール層(もしくは同じような硬い岩石層。業界ではこれらをまとめて「タイトオイル」、「タイトガス」と呼んでいる)からの生産が占めている。

もし、水圧破砕法が禁止(サンダース)されたり、制限(クリントン)されたりしたら、間違いなく価格は上がる。アメリカ国産の原油、天然ガスのみならず、世界中の価格が上がるのは間違いがない。「サウジ」が喜ぶ、というわけだ。ついでに「ロシア」も喜ぶ。

過去18ヶ月間にのぼる油価暴落の中で、技術革新がさらに進み、生産コストが下がり、これはまさに「シェール革命だ」としてBPもエクソンモービルも、両社の長期予測の中で、米シェールオイル、ガスの生産はますます増加する、したがって、筆者が知る限り「初めて」、アメリカは2030年代には「石油の純輸出国になる」と予測しているほどなのだ。

これはすべてシェール層からの生産が拡大することが前提になっている。
よもや、と思うが、まさか、もあるからな。
ところで、よもや、まさか、のトランプさんは、どんなご意見をお持ちなのだろうか?

 


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年3月10日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。