知財本部2015ラウンドが始まりました。 --- 中村 伊知哉

中村 伊知哉

知財本部委員会 本年度第一回。今年も共同座長を務めます。島尻大臣より「強い経済を」との発言。その方向で参りましょう。

冒頭、「IoTやAIの波が押し寄せる中、コンテンツ分野にはクールジャパン政策との連携もミッションとなっていて、しかもTPP合意を受けて著作権の国内制度をどう整備するかという難問もある。守りより攻めを考えたい。」とあいさつしました。

コンテンツ部門の委員は、吉本興業大崎さん、セガ岡村さん、カドカワ川上さん、松竹迫本さん、ニッポン放送重村さん、竹宮恵子さん、サンライズ宮河さん、レコ協斉藤さん、講談社野間さんら。迫力があります。

この委員会と並び、「次世代知財システム検討委員会」を発足させます。AIや3Dプリンタと知財など新テーマを扱います。が、TPP問題も議論になることは必至。オッという会議になるでしょう。舵取りは大変ですが。よろしく。

さて、知財計画2015に関し政府から報告がありました。
J-LOP支援執行86%、aRma権利処理スタート、海外放送枠の確保、プロデューサ人材育成、マンガアニメゲーム人材育成、官民連携プラットフォーム設置、音楽集中管理センターの検討、デジタル教科書正規化検討、分野横断的なアーカイブ連携策の検討など。

また、政府からTPP合意に関して報告がありました。
オンライン著作権侵害防止、映画盗撮の刑事罰義務化、アクセスコントロールを回避する装置の製造や輸入の禁止、著作権保護期間の延長、非親告罪化、法定賠償制度等について。この評価・検証もしなければなりません。

委員からのコメントは、海外展開の強化、コンテンツと他産業との連携強化、デジタル教育・知財教育の強化など。わが意を得たりの指摘が多いのですが、これをどうアクションにしていくか、がわれわれにも問われています。

委員コメントをメモしておきます。

東京商工会議所荒井さん:TPPの知財分野が難航したのは、知財が国力のバロメーターになった証。知財教育が重要。STAP細胞やエンブレムでも認識の薄さが露呈した。

産学連携推進機構瀬尾さん:TPPでアジアは知財に目覚めた。日本が新システムを作り、アジアと連携すべき。先方の文化も取り込み、文化圏・経済圏を作るべき。デジタル教材が重要だが不足している。日本はこの分野の権利制限が多すぎる。

東大喜連川さん:「ITを使った知財の教育」を行うことが必要。

吉本興業大崎さん:コンテンツ集中管理と減税をセットで。公的なネット基金での補償金も。コンテンツと周辺産業のコラボも減税等のインセンティブを与えるとよい。

サンライズ宮河さん:コンテンツと他産業が連携して海外展開を進めるためにも、中小企業・個人向けの「よろず支援拠点」がほしい。

NHK森永さん:同時再送信を始めた。放送・通信著作権の扱いの差を解決すべくスピード感のある制度設計を。

講談社野間さん:インド版巨人の星でアニメと産業の連携を行ったが、継続が大事と認識する。官民プラットフォームなどでの連携、マッチングが重要。

ニッポン放送重村さん:海外向け施策は揃ってきたが、業界内で情報が共有できていない。地方の取組も厚くなったが、取りに行かないと情報が集まらない。そのための組織作りも考えたい。

締めに、知財本部横尾事務局長からコメントがありました。
「知財「活用」でのビジネス創出を心がける。海外展開には「連携」が重要。官民プラットフォームを立ち上げる。他方、人材育成は不十分。小中学校から大学まで力を入れていく。」

知財計画2016の策定に向け、議論を重ねてまいります。よろしくどうぞ。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。