米2月消費者物価指数(CPI)は前月比0.2%低下し、市場予想に並んだ。前月の±0%からマイナスに振れている。原油先物が1月に2003年以来の低水準を示すなか、エネルギーが6.0%低下し直近で最低を記録。そのうちガソリン価格も13.0%低下し、エネルギーと合わせ3ヵ月連続で下振れした。エネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン平均価格は2015年6月に一時2.835ドルと2014年11月の水準まで切り返した後、2月は一時1.724ドルへ下落。2009年3月以来の2ドル割れをたどった。エネルギーとは反対に、食品・飲料は0.2%上昇した。
CPIコアは4ヵ月連続で前月比0.3%上昇し、市場予想の0.2%から加速した。2011年8月以来の高水準に並ぶ。シェアの大きい帰属家賃が0.3%上昇し、6ヵ月ぶり高水準を迎えた。家賃も0.3%と、18ヵ月連続で上昇した。住宅は0.2%上昇し、8ヵ月連続で上向いた。
サービスは前月に続き0.3%と、上昇トレンドを維持しただけでなく直近最高をたどった。医療費が前月に続き0.5%上昇、少なくとも1997年以来で最高を記録した2015年10月の0.8%に次ぐ水準を示しサービスを押し上げている。服飾にいたっては、北東部を中心に大寒波と積雪に見舞われた余波から1.6%上昇し、2ヵ月連続で上向いた。娯楽も0.2%上昇し、2ヵ月連続でプラス圏を確保している。航空運賃は0.1%上昇と小幅ながら、2ヵ月連続で上向いた。新車も0.2%上昇し、2ヵ月連続で上昇。中古車は前月と同じく0.2%上昇している。一方で、教育は0.1%低下し、直近で初めてマイナスに陥った。
CPIの前年比では1.0%上昇、2014年10月以来で最高を示した前月の1.4%から鈍化した。ただ、市場予想の0.9%を上回った。CPIコアの前年比は2.3%上昇し、市場予想および前月の2.2%を超え、2012年5月以来の高水準に並ぶ。
Fedが注目するコアPCE(実線、青と赤)より、コアCPI(点線、緑)は加速。
バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果に対し「コアPCEデフレーターは前月の0.1%の上昇から0.3%へ加速する見通し」と指摘した。その上で「米2月小売売上高のコアが鈍化した理由が、価格によるものでなかったことを示す」と分析する。従って「米1-3月期の実質個人消費は従来予想の2.4%増から2.3%増が見込まれ、同時に米1-3月期GDPも1.9%増から1.7%増へ下方修正する」とまとめた。
――米2月輸入物価指数と米2月生産者物価指数(PPI)が低下した一方、米2月CPIは加速しました。ただ製造業過程でのインフレが抑制的な上、米2月雇用統計で明らかになった通り賃金インフレも芽生えていない状況。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派寄りへシフトしたように、CPIは堅調ながら早々に利上げを促すとは考えられません。成長や個人消費見通しが下方修正されているだけに、景気押し下げへのリスクを回避するでしょう。
(カバー写真:Stewart BlackBy: Stewart Black /Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年3月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。