24日付けの日本経済新聞「視点・焦点」面を読んでいて、最後の一番小さいコラムに来て「うん?」と目に力が入った。
「中国の年6.5%以上の成長は『実現できない』90%」とあるのだ。
中国は16日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、2020年までの新5カ年計画について、年平均6.5%以上の成長を目指すとした。しかし、日経の読者アンケート調査では9割が「できない」と言っているというのだ。
中国はすでに日本を抜いて世界第2位のGDPで、いくら人口が日本の10倍と言っても、ここまで経済が大きくなって6.5%などという高い成長が維持できるのか。
過剰設備、過剰生産が問題になっているではないか。そう感じている人が多く、大手メディア、特に日経ではその矛盾を突いた記事をもっと具体的に詳しくやってもらいたい。
ところが、日経を読んでいると、この6.5%成長などという数字が「当たり前」のように、見出しを中心に日々の紙面で踊っている。「6.5%成長は難しい面がある」としながらも、中国側の発表を重視しているのだ。
10%成長が困難となった数年前からの傾向で、懐疑論が少しづつ増えてはいるが、中国政府の発表重視の姿勢は変わらない。そこに隔靴掻痒の感がある。
と思っていたところ、日経電子版の読者900人にアンケート調査したでは、9割(90・3%)は「6.5%成長など、もはや実現できない」と見ている。明らかに読者の方が日経よりも中国経済の行方に厳しい。
ならば、もっとこのアンケート調査を大きく扱うべきではないか。電子版には詳しく出ている。だが、本紙(新聞)は中国に遠慮して(か)、ごく小さくしか扱わない。そこに、日経の現在の「限界」がある。
電子版の解説をネットで見ると、大半の読者が中国の統計に対する不信感をあらわにしている様子が浮かび上がる――。
「中国の統計は全然あてにならない。地方の共産党幹部は自分の実績を良く見せようと、様々な偽装工作をする」(65歳、女性)
手厳しい。日経はこのように「歯に衣着せぬ」書き方をせず、穏やかにオブラートに包むから読みにくい。読者の率直な声の方がずっと面白い。
「実際の経済成長は難しいだろうが『数字上』の達成であれば、公表する数字を単に操作すればよいだけであるから達成は可能でしょう」(39歳、男性)
中国の役所が数字の操作していると喝破した皮肉な見方だ。
「恐らく、今後消費の衰えが出てくるだろう。成長はするだろうが、6.5%以上は不可能(但し、偽造での達成はありえる)。中国現地にいるとそう感じる」(36歳、男性)。
大半の読者は、中国が年6.5%以上の経済成長を続けられるかどうか以前に、統計数字自体に信頼を置いていない。「実態は無理だろうが、公表数字上は達成可能」と突き放している。
日経は中国政府の統計データの発表を、もっと小さく扱うべきではないのか。扱う場合も、「ほとんどゼロ成長の電力量や交通量から見ると疑問が残る」という書き方にすべきだろう。
中国では腐敗が横行し、それが経済格差を広げているため、人民の不満が強まっている。このため、習近平指導部は腐敗撲滅のキャンペーンを推進し、不満の解消に努めている。だが、読者アンケートでは「腐敗撲滅は進めるべきだ」という声が多いものの、一方で習執行部への醒めた見方も出ている。
「反腐敗に名を借りた権力拡大。今までの成果は不明だ」(75歳、男性)、「中国では賄賂・汚職は共産党員すべてがやっていること。反腐敗とは政権中枢部に対する反対派の粛清でしかない」(68歳、男性)。
反腐敗運動を名目に、習指導部が党内の反対政治勢力を排除し、自らの権力基盤をより強固なものにしようと見ているのだ。
こうした論考はネットや中国批判の強い雑誌では珍しくない。だが、日経でも読者は同じような見方が増えている。それを新聞でもアンケートの形でもっと大きく取り上げて行く姿勢が必要だろう。その方が新聞が面白くなる。