通信と金融の融合

2014年2月某日。大企業の人事担当者を対象としたパネルディスカッションの登壇を終えて、僕らは神楽坂で打ち上げをしていた。パネリストは主催者であるビズリーチの南壮一郎社長と、Facebook Japan 副代表から KDDI の新規事業担当部長として移籍していた森岡康一氏。1976年生まれの3人は同じネット業界で旧知の仲。話題は新しいネットサービスへ積極的な投資を始めていた森岡氏の近況から、何気ないプライベート談義を経て、自然と通信と金融の未来について移っていた。

それから1年後、2015年4月。ライフネット生命はKDDI 社と資本業務提携を結び、同社が15%超の筆頭株主となるとともに、通信と金融を融合させた新しいサービスの構築に取り組む旨を発表していた。居酒屋の個室で始まった何気ない会話が、新しいパートナーシップとして結実したわけだ。

生命保険と通信、そして電気やガスは似ているところが少なくない。安心して暮らしていくために毎月払うコストであり、必要以上に払うべきではない経費である。自動的に引き落とされ、日常では意識しない。業者とは長期にわたる契約関係に入る。継続率が長期的な顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)に影響を及ぼす。英語ではこれら通信・電気・ガスなどのサービスはユーティリティサービスといい、一括りにされることが多い。

通信事業と金融サービスは親和性が高く、協業することで新しい価値を顧客に提供できるのではないか。ずっとそのように考えていた。スマートフォンの普及によって通信サービスが多岐にわたって生活に寄り添うようになったいま、その融合が新しい境地に入る。

ライフネット生命にとって、大きな顧客ベースを持つ企業と提携を通じて成長を志向するのは創業時からの戦略でもある。僕らは三井物産、セブンイレブン、新生銀行、リクルートなど、いくつもの消費者向けビジネスを抱える大企業を戦略株主として開業した。今回のパートナーシップもその一環だ。

KDDI 社との提携がこれまでの大株主と異なるのは、同社が15%超の資本参加+取締役派遣をした結果、保険業法上の「保険主要株主」となったことである。金融庁の認可も受け、長期にわたってライフネットの成長を支える意思を示していただけたと考えている。これまでの資本構成では、最大の株主でも15%未満となるようなバランスを取ることで、一社の影響力が強くなりすぎることを避けていたが、一歩踏み込んだ強いパートナーシップを志向したわけだ。

この新しいパートナーシップが明日、2016年4月5日に、ついにサービスインすることになった。ライフネットが引き受ける保険商品を 「au の生命ほけん」として、同社の金融サービスと合わせて提供していく。スマホ経由、店頭でのチラシとコールセンター経由、そして店頭での案内もしていく(常設店舗はまずは au SHINJUKU のみ)。当社の評価が高い商品を、auブランドを活用して、より多くのお客さまに広めたい。専用の申込アプリも開発した。まずは既存商品を便利に、かつお得な形で提供するが、将来的には専用商品を含めて、このチャネルに合った新しい商品サービスを開発していきたいと考えている。

通信と金融が融合する未来はどんな世界になっているのだろうか。これからが楽しみだ。そして、この未来を一緒に創っていく仲間を募集しています。スマホ企画、商品開発、代理店、事務企画、コールセンター、幅広い職種で新しい仲間を募集していますので、我こそはと思われる方は、ご応募ください!


編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2016年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。