パナマ文書って何だ?

岡本 裕明

「パナマ文書」という言葉をポツポツとメディアでお見かけするようになりました。これは何、と思われる方も多いと思います。一言で言ってしまえば南米パナマの法律事務所から漏れたかつてない規模の情報リーク事件であります。その情報量は2.6テラバイト、ファイル数1150万件であり、過去最大級だったアメリカ外交公電流出事件、エドワードスノーデン氏のアメリカ国家安全保障局の個人情報流出事件と比べても比較にならないほどメガ級の規模であります。

この流出は世界を代表するオフショア法人設立のエキスパートであるモサック フォンセカ法律事務所から匿名者によりリークされたもので流失の時期は2015年8月とされています。それが南ドイツ新聞にもたらされ、ジャーナリストの調査機関に流れ、世界中のジャーナリスト数百名がその解明を進めているという事件です。

現在、その解明された一部が報道されつつあり世界を代表する国家元首、著名人らが家族、親族、知人、友人などを介してオフショア法人を設立し、蓄財、ないし節税など何らかの「行為」を行っていた可能性が指摘されています。その名前はプーチン大統領から習近平国家主席、イギリスのキャメロン首相といった国家元首や首脳を始め、FIFAの倫理委員会なども含む早々たるリストのようです。

ジャーナリストによる全容解明が進めば近い時期(5月ともされます)に大きく報道される公算もあり、各国の税務当局も当然ながらその内容を注視するという流れになっています。日本人は現在二人、名前が挙がっているようであり、おひとりは某警備保障会社の創設者で著名な方です。

誤解を招かないようにしないといけないのですが、オフショアに口座を持つことは別にやましいことではありません。きちんとしたルールに基づき、正攻法で租税回避などを行うわけです。私も90年代、海外法人の租税対策でそのような検討をしたことがありますが、余りにも未知の世界過ぎてそこまでは踏み込みませんでした。その後、租税回避が社会一般から倫理感として厳しい視線が寄せられるようになり、アメリカ企業による租税回避の実態が次々暴かれたのは記憶に新しいところであります。つまり、安っぽい言葉ですが、オフショアを使った租税回避は時代のニーズからは遠ざかっているともいえます。

それはオフショアの持つイメージがまるで「隠し事」をしているかのように思われるところがあるのでしょう。事実、FIFAの倫理委員会とプーチン大統領のごく親しい友人たちと習近平国家主席の義理の兄弟という名前が一緒くたに並べられると一般人は勝手に一定方向の想像をしてしまいます。

法律事務所のこの最新で巨大なる情報をリークさせたのが誰だかは報道されていませんが、エドワード スノーデン氏のように自己満足のヒーローになりたかったのでしょうか?私はそんな簡単な理由ではない気がします。

「パナマ文書」から今後何が飛び出すか全くわかりません。何も出てこないかもしれません。ただ、46カ国の政府関係者の名前が挙がっているとされながら、なぜかその中にアメリカの名前が見当たらないのです。とすればここからは勝手な想像がわき上がってくるのですが、これはエドワード スノーデン事件に対するアメリカの報復なのではないか、という気がしてならないのです。つまり、リークさせた「匿名係」はアメリカの息がかかっている人物である可能性は否定できないでしょう。

事実中国政府もこのリーク事件で得をするのはアメリカだと指摘しているようで外交問題を含め、新たなる展開も考えられます。

一般庶民、特に日本にはほとんど縁がない話のようですからゴシップ話として聞き流されるかもしれませんが、世界の裏側を垣間見るには面白いネタであることは間違いなさそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月6日付より