4月の日銀による追加緩和が難しい理由

日銀は4月27、28日に金融政策決定会合を開く。昨年までは年14回の決定会合が開かれ、展望レポートの発表がある4月と10月は月2回開かれていた。しかし、今年からは年8回となり、4月は27、28日の会合のみとなる。決定会合が年8回となれば、昨年までと異なり臨時の決定会合を開くことがなければ、金融政策変更のタイミングが減少することになる。4月の会合の次は6月15、16日の予定となる。つまりもし仮に今後追加緩和を必要とするのであれば、4月を逃すと6月までできない。

日銀短観の悪化やここにきての円高・株安もあり、4月の決定会合では追加緩和の有無を検討する可能性指摘されている。経済・物価情勢の展望(展望レポート)の発表は昨年までの年2回から年4回となったが、4月にも予定されている。ここで日銀は物価の見通しをさらに下方修正する可能性があり、物価目標達成時期も先送りしてくる可能性がある。このための追加緩和期待も出てこよう。

5月には伊勢志摩サミットの開催が予定されているが、それに向けた経済対策を政府が講じる可能性が高まっており、それをフォローするための追加緩和の必要性もあるのかもしれない。このように何も障害がなければ、日銀が逐次投入型の追加緩和を決定してもおかしくはない。しかし、それは現実的には難しいと思う。

日銀は1月の決定会合でマイナス金利政策を導入し、量と質、金利の三次元の緩和を行うとした。ところがこのマイナス金利に対する評判が芳しくない。同じくマイナス金利を導入したECBはマイナス金利は打ち止めにする意向を示している。それでは量で行くのかとなれば、昨年12月の補完措置で量を拡げる措置はとったものの、国債をさらに大量に買い入れるとなれば2016年度の市中発行額をも上回ることになり、国債の買い入れで札割れが起きる懸念が強まる。

もちろん質を含め、あらたな手段を講じる可能性はなくはないが、さらに次元の異なる政策は見いだせるのかは疑問である。つまり黒田総裁がいくら限界はないと主張しようが、現実的には追加緩和手段には限界が見えてきている。

安倍首相はWSJとのインタビューで「恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」と発言していたが、政府による為替介入などによる円安政策には米国を中心に批判的な声が高まっている。サプライズ的な日銀の追加緩和に対しても海外からは批判的な見方をされていることも追加緩和への障壁となりうる。もし日銀が追加緩和を行う心づもりがあるならば、少なくともECBなどのように事前に市場に向けて申告する必要性があるように思う。

2014年10月の「量的・質的緩和の拡大」に際しては、いろいろとタイミングが意識されていたが、そのひとつに消費増税の行方が意識されていたのではなかろうか。黒田総裁としては消費増税が予定通りに実施されることを望んでいたとみられ、そのための事前策としての追加緩和との意識もあったのではなかろうか。

今回も政府が消費増税を巡って予定通り実施するのか再延期なのか、2014年10月時と同様に不透明感が強まっている。ただし、安倍首相にとって自らの任期中に2度の消費増税の引き上げは正直なところ、したくはないというのが本音ではないかとみられ、そのために海外からわざわざ有識者まで呼んで意見を聞いたぐらいである。今回も延期される可能性が強いことも確かではなかろうか。そうであればここで予定通りの消費増税を前提とした追加緩和を打つ必要性はない。

このようにタイミングとしては追加緩和を期待する声も出てもおかしくはないが、現実としては追加緩和を行うにはいくつもの障壁が存在し、難しいのではなかろうかというのが結論となる。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。