「秘書の責任です」って言われた時の秘書の心境は

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議員秘書は、議員の直接採用か党が一括採用するかの2パターンに分かれます(政策担当秘書は異なります)。直接採用の場合は入社試験や公募をおこなうことは少ないのでコネクションでの採用がほとんどになります。

採用はリスクをともないますのでコネクション採用はそのリスクを軽減させることができます。私の知人の多くもコネクション採用だったと思います。

●なぜ秘書は責任をとるのか

さて、今日ほどメディアで政治家の不祥事が取り沙汰されない日はありません。様々な問題が発生するたびに、責任の所在が問われます。日本では古来より、何らかの問題が発生した場合は、その問題を管轄する当該責任者が責任をとる由来があります。武士の切腹などはその際たるものですが、その地位や職責を辞することによって責任をとることは今でも広くおこなわれています。

秘書は何か問題が発生した時には「自分が責任を負う」覚悟を持っています。「自分が責任を負う」という意識がなければ、問題の大きさや影響度を正確に把握することができないからです。もし、自分以外に誰かが防波堤になってくれるという気持ちがあれば、「あとはあの人がどうにかしてくれるだろう」という甘えが出てきてしまいます。このような甘えは判断する目を曇らせてしまう危険性があります。

「最後は上司が責任をとってくれるに違いない」と考えていたのに、上司が責任をかぶらずにあなたに押し付けてくるということがあったとします。そんなとき、上司の悪口を言う前に自分自身がその甘えを反省すべきです。「こんなはずじゃなかった」と、ならないためにも「自分が責任を負う」という覚悟が必要なのです。なかには負いたくないような責任もありますが、秘書になった時点でその覚悟はできているものと考えてよいと思います。

●秘書は言い訳をしない

2012年12月の衆議院議員選挙で与党だった民主党(現民進党。ここでは民主党を使用します)が大敗しました。8人の現役閣僚が落選する歴史的な大敗でした。前々回衆議院議員選挙で民主党が大勝して、社民党、国民新党と連立する形で政権が発足しました。脱官僚・政治主導を掲げ、事業仕分けを行い、高等学校の授業料無償化、農業者戸別所得補償制度など、生活に関わる部分の政策も実施されましたが、政策の成果が現れなかったため、支持率が急落し、選挙での大敗を引き起こすことになりました。

選挙の直後、民主党内では、野田総理(当時)や党の責任だと批判する発言が目立ちました。これらの発言の多くは責任を転嫁する発言でした。そのような中、岡田副総理(当時)が「選挙は、最終的には自分の責任。執行部や他人の責任にするところから改めないと、この党は再生できない」と発言しました。実際に同じ民主党のなかでも実力者と言われている人たちは当選しています。そのような責任転嫁をする人は、そもそも当選したのも「執行部のおかげ」「自分の力ではない」ことを露呈しているようなものです。

秘書が責任をとるときには言い訳をしません。言い訳をすることは見苦しいからです。何かしらのバーターを要求して、損得勘定したような責任の負い方は、決して良い結果を生むことはないことを知っているからです。

●秘書はフルバックである

ラグビーのフルバック(FB)というポジションの役割をご存知でしょうか。フルバックとは、チーム全体の最後尾に位置する選手のことを表します。背番号は15番で守りにおいては最後の砦となる選手です。

ラグビーのトライは相手の陣地に攻め込んで、インゴールでボールをグラウンディングすることで認められます。ラグビーではディフェンスがとれる唯一の防御策はタックルしかありません。ラグビーの経験のあるヒトなら分かると思いますが、タックルの実施には勇気が必要です。相手も全速力で走ってきますから重大な怪我の危険性も潜んでいます。フルバックは最後尾のポジションですから、フルバックが抜かれたら防御手段はありません。ゆえに「最後の砦」といわれているのです。

責任をとり「ドロをかぶる」ということは、自分のなかで常にフルバックの意識をもつ必要性があると思います。自分でドロをかぶる意識がある限り、甘えは許されませんし責任の重さを実感しなくてはいけないからです。どのような事態が発生しても揺らぐことなく、現実を受け入れて処理するだけの能力が必要となります。それは、ドロをかぶってでも生き抜く生命力のことであり、最終的には自らが責任を負うという気概を持つことに他ならないからです。秘書にはそのような意識の方が多いのではないかと思います。

尾藤克之
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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