金融の理論的基礎付け

160412

自分が所有する住宅から生活資金を発生させようと思ったら、どのような手法があり得るか。三つあると思われる。第一は、貸して賃料を得ること。第二は、住宅を担保に供して借金をすること。第三は、売却して代金を得ること。ここまでは簡単である。

問題は、生活資金だけに、毎月の定期金にしたいわけである。貸して賃料を得る場合は、そもそも賃料が月極めだから、わかりやすいが、借金や売却の場合には、大いに工夫が要る。

では、住宅を所有していない人が住宅に住もうとしたら、どのような手法があり得るか。第一は、借りて賃料を払うこと。第二は、借金をして住宅を取得すること。

これも、住宅費は生活費の中心なのだから、毎月の所得のなかで、無理なく負担できることが基本である。故に、住宅を取得するための融資契約は、元利均等で毎月弁済していく方式が主流となるわけである。

論点は、どのような手法を用いようとも、同じ住宅については、そこから創出される現金の理論的価値は等価でなければならないということであり、そこに住むための費用の理論的価値も等価でなければならないということである。さらにいえば、ある住宅から創出される将来の現金の現在価値と、その同じ住宅に住むための将来の費用の現在価値とは、等価であろうということだ。

この等価性の体系こそが金融理論を支える効率性仮説の要諦である。これは、住宅金融についてのみなりたつのではなくて、全ての企業金融や事業金融についてなりたつ理論である。例えば、ある事業資産について、その資産を借りて賃料を払うことと、取得資金を借りて所有して金利を払うこととの間には、等価性がなくてはならないのである。

要は、一物一価の原則に従って、一つの同じ資産については、背後の金融的な手当ての違いにかかわらず、理論的な利用費用は同じになるはずだということである。

ただし、等価性は条件の違いを調整したうえでのことだから、表面的には、等価ではない。条件の違いを調整したときの等価性の原則、これが金融取引の条件、あるいは広く経済取引の条件の理論的基礎付けの根幹である。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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