ダニエル・ヤーギンのリバランス発言

先週末(4月8日)のNYMEXにおけるWTIは、2ドル46セント上昇して39ドル72セントで終えた。40ドル前後での行ったり来たりがいつまで続くのかなと思い、久しぶりにデータを覗いてみて、面白い発見をした。

最終取引日を4月21日(木)に迎える5月限月ものは86万枚(8億6,000万バレル、世界全体の生産量合計に近い)が取引され、”Open Interest” (未決済約定残高)は42万枚(4億2,000万バレル)となっている。この42万枚は4月21日までにはほとんどが逆取引される。

上場されている2024年12月限月までの合計取引量は170万枚(17億バレル)で、”Open Interest”は177万枚(17億8,000万バレル)だ。

最近の取引が低調な日の出来高は約100万枚(10億バレル)だから、市場参加者たちが17日の産油国会議(生産凍結討議)を前に様々な思惑を持って取り組んでいる様子がうかがわれる。

筆者が面白いと思ったのは、1年先の2017年5月限月ものの終値が44ドル53セント、つまり期近ものと5ドル程度に値差が縮まっていることだ。トレーダーたちがコンタンゴ・オペレーション(期近の現物を購入してタンクあるいはタンカーに貯蔵し、同時に1年程度先物を販売して利益確保を目指す取引)を行うには、貯蔵コストおよび金利を考慮すると10ドル以上の値差が必要なのだが、長いあいだ7ドル程度で推移していた。これが5ドル程度に縮まっているのだ。

市場が、目先の価格がこれ以上は上がらないだろうと見るようになると、コンタンゴ(先高)はバクワデーション(先安)に転ずる。今はその途上にある。つまり参加者たちが、市場はリバランス(需要と供給が均衡すること)に向かっていると判断している証左だろう。

では、リバランスはいつになるのか?

この点に関し、今朝読んだ記事に興味深い指摘があった。ダニエル・ヤーギンのものだ。

FTは “OPEC’s days as economic force are ‘over’”と題する記事を今朝未明(ロンドン時間4月10日19:05)に電子版に掲載し、ダニエル・ヤーギンへのインタビューの要旨を伝えている。

記事の主要点は、タイトルにあるように「OPECの能力」に対するヤーギンの見方なのだが、筆者には最後に記された次のコメントが興味深く感じられた。

「在庫が積み上がっているが、まだもはや貯蔵するスペースがないという状況ではない。底(bottom)はすぐにやって来る。今年後半か、来年早々には市場はバランスするだろう」

うーむ、なるほど。

なお、ヤーギン発言の主要点は次の通り。

・世界経済の決定的な力としてのOPECの時代は終わった。分裂した組織であることは明らか。

・2014年末からの今回の価格大暴落は、彼の経験上、80年代半ばのものと並ぶ最悪の暴落。

・4月17日のドーハ協議は、イランが満足の行く水準にまで増産が進まないと参加しないので、先日のサウジ副皇太子の発言にもあるように、合意に至ることは困難だろう。

・サウジは石油について、まったく異なった見方をしている。(←これ、知りたい!)

・かつては、孫のために石油をとっておこう、と考えていたが、今や主役となった孫たちは、石油が大事なものだとは思っておらず、金銭化(monetize)するものと見ている。

・価格はいずれ回復する。

さほど長くない記事ですので、ぜひ原文をお読みください。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月11日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。