残念無念、三菱自動車

三菱自動車の燃費試験データ改ざん問題に接した時、開いた口がふさがりませんでした。ちなみに私は同社の株主でもないし、同社の自動車を現在持っているわけでもありません。(アウトランダーをレンタカーで持っていましたが先月、手放しました。)ただ、昔、自家用でギャランやミラージュに乗っていたこともあり、自動車メーカーとして嫌いではありませんでした。

なぜ、愕然としたか、それは改ざんという不正が再び大企業で起きてしまったことでニッポン株式会社への信任が下がるということに他なりません。折しも同様の問題で世界を騒がせたフォルクスワーゲンはアメリカで販売した対象車57万台をVWが買い取ることで当局と決着したようです。同社の負った傷も深く、まずはアメリカに想定以上の対応をすることで問題解決を探る苦しさが見て取れます。

VW社は内部留保も含め財務はそれなりの状態にあるとされていながらも銀行からの借り入れを急遽アレンジするなど見えない先にとりあえずの手当てをすぐに行った経緯があります。

三菱自動車の場合、15年末で4500億円の現預金があるので前回の不正時(2001年3月期)の224億円に比べれば遥かに財務的には安定しているというコメントが出ていますが、そんなのんきな話なのだろうか、と危惧しています。

同社の場合、販売車種を絞り込んできた経緯があるため、ディーラーに行ってもピンポイントで欲しいという車がない限りなかなか選択肢に入りません。アウトランダーは良い車だと思いますが、他はどうでしょうか?カナダでは軽自動車はもちろん売っていませんので先日も三菱の販売店で一通り見て歩いたのですが、(レンタカー用途をふくめて)何も欲しい車がありませんでした。

そんな中、起きた今回の事件。そして最新の情報によればi-MiEVもその疑いがかかり、それと同じ計測方法のアウトランダーやRVR等4車種も芋づる式に引っかかる可能性があると報じられています。

このニュースはまだ当地では出回っていませんが、すぐに広まることでしょう。同社は海外での販売が会社を支えているようなものですが、同様の問題を起こした現代自動車はクルマが売れまくっていたアメリカでぽつんと放置されたような販売状況であったことを考え合わせれば影響は相当深刻になりそうです。

感覚的には東芝の時よりも経営に影響する度合いははるかに重く、存続が危ぶまれる可能性もあるかと思います。いや、実際に同社は身売りをすることで負のイメージを払しょくする必要すらあるのかもしれませんが、同社を積極的に買収したいと感じる企業があるかどうか、そこが最大のチャレンジである気がします。

ではなぜこんな事件が起きたのでしょうか?想像ですが、激しい燃費競争の中で数字を上げなければいけないというプレッシャーが不正行為に走らせたという点では異論がないと思います。(東芝の時も原点は同じです。それが経営者だったのか担当部長だったのかの違いです。)

東芝の時と似た体質だと思われる点は不正を知っていたであろう部署なり担当者が皆口裏を合わせた点ではないでしょうか?「責任は俺が取るからやれ!」ぐらいの勢いだったのでしょうか?「それならばしょうがない」と部下が従ったとしたらこれはニッポン株式会社の恥部とも言えます。私の認識する限り日本のサラリーマンは責任という言葉が一番苦手であります。一般には「これで会社を首になりたくない」という保身の意識が踏み出せない、あるいは踏み込めない弱点を持つのが日本の特徴です。一方でアウトロー的な行為に対して「ばれなければ大丈夫」という安易な賭けに出る傾向があるのも事実です。今回はそちらの方でしょう。同様の問題は東洋ゴムの時もありました。

今回の問題はまだ踏み込み始めたばかりでどこまで根が深いのか全く想像できません。が、同社に於いては三度目の不正ですのでいくらグループ会社の三菱東京UFJもおいそれと資金提供できないでしょう。(そんなことすれば銀行株主からの突き上げが必ずあります。)タカタの問題もまだ落ち着いておらず、同社の行方も不明瞭な中、完成車メーカーの今回の問題は明らかに日本の自動車メーカーに影を落とすことになるでしょう。

技術や売れ行きに任せて強気になりすぎると思わぬ落とし穴が待っているということであります。

私は心の底から今回の問題を憂えています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月22日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。