4月FOMC、明確な利上げ示唆を見送りの予想

安田 佐和子

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4月26~27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、エコノミストの予想を紐解いていきましょう。マーケットが織り込む通り金利据え置きで意見一致するほか、明確な利上げサインを点灯させるとは想定していません。

▽JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト

今回のFOMCで金利を据え置く見通しで、マーケットの注目は声明文だろう。当方は大きな変化を予想していないものの、世界経済の鈍化や金融市場リスクの後退を受けて3月FOMCより見通しに上向きのトーンが加わるのではないか。ただ、2015年10月FOMC声明文で同年12月の利上げのシグナルを発したような明確なヒントを与えると想定していない。3月FOMCでは、わずかにハト派寄りが優勢となってインフレへの「下方リスク」が明記された。足元のドルや原油価格の動向を踏まえれば、インフレへの下方リスクは和らいだ。そうした下方リスクの後退を認める程度で、引き続き注視するスタンスを打ち出しうる。

仮にリスク評価を「均衡」へ変更すれば6月利上げへの強いシグナルを発したと受け止められよう。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の見解を踏まえれば、タカ派へシフトしたとの印象を与えるとは想定しづらい。また、FOMC明けの朝一番に公表を予定する米1-3月期国内総生産(GDP)速報値は、1%割れとなる見通しとあって、明確にタカ派寄り軸足を移すことは困難だろう。好調な労働指標を受けて雇用の文言は調整が必要だろうが、インフレへの慎重な認識は維持されよう。

▽BNPパリバ 経済調査チーム

4月以降、金融市場は緩和寄りへシフトしてきた。実質金利は低下し、ドル安に振れ、株式市場は上昇し、スプレッド拡大が巻き戻された。もっとも、4月FOMCでの利上げシグナル点灯は3月FOMC議事録で明記されたように「切迫感」を与えかねない。3月FOMCで追加された文言の「しかしながら、世界経済と金融の動向はリスクをもたらしうる」は据え置かれるだろう。2015年8月および今年1月にボラティリティの引き金を引いたリスクは完全に消えたわけでもない。声明文の変更は、市場を驚かせない範囲内に収まるのではないか。

成長率は2015年10-12月期GDPの前期比年率1.4%増を含め、1-3月期も当方の予想通り1%割れとなれば、2四半期連続で低成長が続くことになる。労働市場が3月FOMC声明文で「労働資源の活用不足」を削除したように改善をたどる一方、賃金は抑制的だ。インフレをめぐる表記は、足元の動向を踏まえると変更はないもよう。声明文の変更は、微調整に収まる見通しだ。

――2015年12月に利上げを開始した当時のリスク評価は、「均衡(balanced)」でした。直前にあたる同年10月FOMCでは「ほぼ均衡(nearly balanced)」であり、同年9月に利上げを見送ったとはいえ同年7月当時も同じ表現だったため、ここが変わってくると利上げへ一歩踏み出すと考えられますが、両者によるとこうした明確なシフトは見送られる見通しです。そのほか、インフレに係る文言でも2015年10月は同年9月に追加した「足元の世界経済および金融市場の動向は、米経済活動をいく分抑制する可能性を残し、短期的にインフレへ下方圧力を加えうる」をあっさり削除。10月FOMC声明文での極めつけの変化は、「次回の会合で利上げを行うことが適切かどうか、委員会は最大限の雇用とインフレ2%という目標へ向けて実際値と予想値の動向を精査していく」でしょう。

つまりFOMCは2015年12月の利上げの地均しとして、1)リスク評価を「ほぼ均衡」、2)インフレ下方リスク懸念に係る文言を一部削除、3)次回利上げを協議する明確な示唆――と3本立てを用意していたわけです。今回のFOMCでは6月利上げの選択肢を残そうとはするでしょうが、ここまで際立った利上げサインを発するとは考えにくく、市場を揺るがすようなサプライズに見舞われることはないでしょう。

(カバー写真:Scott/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。