国家崩壊と経済危機で放置〜チェルノブイリ被災者の悲劇

八幡 和郎

チェルノブイリから30年。ヨーロッパ各国のテレビ・ニュースで、ソ連崩壊とウクライナの経済危機で、原発近くに住み続ける住民たちの悲惨な状況が映し出されて息を呑む。

移転を勧告されているが補助は出ず、仕事もなく、生活支援は打ち切られ、仕方なしに危険覚悟で元の住居に住み続ける住民が多くいる。癌などになっても医療水準が低いので十分な治療を受けられず、汚染された畑でつくった野菜を食べ続けている。

事故の処理に十分なコストがかけられ、科学的根拠で説明できないほどの微量の応射能でも念のために対策を講じ、再生可能エネルギーなど非効率な分野に補助を出せるのも、すべて、国家がしっかりし、経済成長が確保されてのことだ。無駄を省き、経済優先をつらぬけばこそ安全に気を配れるのである。

経済に悪いことをするのが正義という人ほどヒューマニズムの敵は居ない。「経済優先が過ぎる」「安定成長でいいから頑張りたくない」とかいうのに限って安全で贅沢な美しい生活を求め、手厚い福祉を浅ましく求める。

その先に待っているのは、経済が破綻し、極左政権で傷口を広げた、ギリシャ悲劇の世界だ。 


編集部より;この原稿は八幡和郎氏のFacebook投稿にご本人が加筆、アゴラに寄稿いただました。心より御礼申し上げます。