ここにきて米国やドイツ、英国など欧米の長期金利、つまり10年債の利回りが徐々にではあるが上昇しつつある。
今年に入り、原油安やその要因となった中国経済の減速懸念などからのリスク回避の動きにより、欧米の長期金利は急速に低下した。米10年債利回りは昨年末の2.30%あたりから今年の2月11日に1.65%あたりまで低下した。
しかし、このあたりからリスク回避の動きは後退し、3月9日あたりにかけて米10年債利回りは2%近くまで上昇した。これは原油先物が底を打ったかたちで反発しており、原油価格の上昇とほぼ同じタイミングとなっていた。
その後、米10年債利回りは再び低下し4月7日には1.7%割れまで低下した。原油先物が再び売られていたこともあるが、原油先物の下げピッチに比較すると、米10年債利回りの低下は意外に大きかった。利上げは慎重にとのFRBのマーケットフレンドリーな姿勢を好感した可能性はあるが、4月7日頃を底に再び米長期金利は上昇し、これによりダブルボトムを形成することになる。米10年債利回りは1.7%割れから再び上昇トレンドを形成し、4月25日に1.9%台まで上昇した。
この動きは、FRBとは金融政策の方向性が真逆となっているユーロ圏を代表する長期金利、つまりドイツの10年債利回りも同様の動きとなっていた。ドイツの10年債利回りも2月末に0.1%近くまで低下し、4月8日に0.1%割れとなったあと上昇し、4月25日に0.26%をつけ、ダブルボトムを形成した格好となっている。
そして米国債と連動性も高く、金融政策は中立的なスタンスの英国でも英国10年債利回りも、米国やドイツほど綺麗なかたちではないが、ダブルボトムのようなかたちとなっている。
これらを見る限り、どうやら欧米の長期金利の低下はいったん底打ちし、6月のFOMCでの利上げ観測もあり、米長期金利は再び2%台を見据えた動きとなることが予想される。
それではこの欧米の長期金利の動きに対し、日本の長期金利はどうなっているのか。日本の長期金利は長らく低下トレンドが継続中で、1月29日の日銀によるマイナス金利の導入でさらに加速され、10年債利回りそのものもマイナスとなった。ただしその低下基調もここにきて弱まりつつある。
これは日銀のマイナス金利への批判などからこれ以上の深掘りは難しいのではとの観測だけでなく、米債などの動きも影響している可能性がある。もし米長期金利が2%台に乗せて昨年末の水準である2.2%あたりまで回復するとなれば、ドイツや英国の長期金利も同様に上昇してくる可能性がある。そうなれば少なからず日本の長期金利にも上昇圧力が掛かる可能性がある。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。