世界に約12億人の信者を有するローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王は法王選出会(コンクラーベ)によって選ばれる。ペテロの後継者のローマ法王を選出するのはこれまで男性だけだった。ドイツ人のヴァルター・カスパー枢機卿(83)は、「理論的には女性もローマ法王を選出できる」と主張して話題を呼んでいる。カスパー枢機卿は26日、ローマで開催された会議の中で語った。
コンクラーベ参加資格は80歳未満の枢機卿となっているだけで、性別については何も明記していない。だから、カスパー枢機卿が指摘するように、「理論的には女性もコンクラーベに参加できる」ということになるが、問題はコンクラーベ参加資格の80歳未満の女性枢機卿などいないことだ。
枢機卿だけではない。司教、神父ら聖職者に女性は一人もいない。女性にコンクラーベの選挙権を与えよという前に、女性聖職者への道をバチカン法王庁は開かなければならない。バチカンに女性聖職者がいないことについて、カスパー枢機卿は、「現行の聖職者主義に固守する教会指導部に責任がある」という。
バチカン会合に参加したバチカン専属のジャーナリスト、グドルン・ザイラー女史は、「バチカン内の女性の割合は20%前後だろう」という。ただし、バチカン放送では半分の職員が女性である一方、バチカン内の聖職者省では女性職員は一人もいないように、バチカン内の部署によって女性の割合は大きく違う。
バチカン放送が昨年3月公表したところによると、過去10年間でバチカン市国内の女性職員数は195人から371人とほぼ倍化。バチカン市国とバチカン法王庁内の女性職員の総数は762人だ。ただし、その数字には枢機卿のもとで働く家政婦などは含まれていない。
バチカン内に女性職員が少ない主因として、ザイラー女史は、「バチカンには固有の人事部がないからだ」という。すなわち、人事は神の御心で決まるものだから、人事部は不必要だというわけだ。
南米出身のフランシスコ法王は、「カトリック教会は指導的な立場に女性を登用すべきだ」と述べてきたが、女性聖職者については、歴代法王と同様、考えていない。
米聖公会は2006年11月、第26代総裁主教認証式で初の女性総裁主教を選出して、大きな話題を呼んだが、ロシア正教は「キリスト教会の伝統に違反する」と猛反対するなど、女性聖職者問題ではキリスト教会の宗派によって、その見解が異なる。
ローマ・カトリック教会は女性聖職者を認めていないが、教会史では一度、女法王ヨハンナが西暦855年から858年まで就任していたという文献が存在する。ただし、歴史家の多くは「伝説に過ぎない」と否定的に受け取っている。
カスパー枢機卿のコンクラーベへの女性選挙権の話は話題としては面白いが、選挙権の前に女性に聖職者への道を開き、最終的にはローマ法王に立候補できる被選挙権を認めなければならない。それまでの道のりは平坦ではなく、長い。