どうも新田です。「憑依」と書いて「ひょうい」と読みます(追記リクエストあり、意味はこちら)。先日、SMAPの9月解散騒動を打ち消すジャニーさんの発言を伝えた報道についてツイートしたら、200以上もRTされて久々に反響がありましてね。
ゴゴスマで、スポーツ紙による、スマップ解散説打ち消し報道やってるけど、日刊スポーツとかジャニーズ事務所のシナリオそのまんまのような書き方していて辟易するな。
— 新田哲史・アゴラ編集長 (@TetsuNitta) 2016年5月5日
今年1月に解散騒動が勃発した折は、アゴラでも、ジャニーズ事務所がテレビ局に力関係で勝っていることから生じる“タブー”を、経済学的、あるいはメディア論的な視点から指摘したエントリーがバカ受けして、デイリーのページビューとしては創刊以来最多となる35万を叩き出しました。ネット上では、大手スポーツ紙の報道内容について、額面通りに受け取らない人が多いことを改めて実感した次第です。
記事に抱く、もう一つの違和感
今回の日刊スポーツの記事に違和感を覚えたのは、ジャニーズ事務所が描く“ストーリー”に乗っているのが相変わらずだからなのですが、事務所に対して大手スポーツ紙等の芸能メディアの力関係が弱いという構造的な部分については、これまでも散々ネットやアングラ系メディアで取りざたされた通りなので割愛します。
ただ、この記事には、もう一つ、セロリの苦味のような違和感があって指摘しておきたいのが、スポーツ紙独特の文体。情報番組で引用されていたのがこちらの記事なんですが、ジャニーさんが9月解散説を打ち消す発言の背景について「解説」をしております。
要は、ジャニーさんがSMAPに「愛情」を降り注いできたから、解散はないんですよ、という「ストーリー」で書かれてるわけですが、気になったのが最終パラグラフ。なんですか特にこの締めの一文。
ジャニー氏はどのアイドルも、デビュー後はマネジャーに託す。SMAPも例外ではない。だが今も、中居はジャニー氏とテレビ局などで会えば、いろいろな話をするという。直接的な交流は少なくても、ジャニー氏とSMAPの絆は切れることはない。
「切れることはない!」なんて断言しちゃって、おまえはジャニーさんかよ、って青いイナヅマばりに素早いツッコミを入れてしまいそうです。まるで夜空ノムコウから著名人の守護霊が降臨してきて、そのコメントを本にしている某宗教団体教祖を彷彿とさせるような「憑依っぷり」に、ライオンのハートも破れるような驚きでした。去年の秋からのお家騒動がなかったような書き方、文脈からしても、事務所独立に失敗した4人のメンバー側の裏取り取材をしているようには感じられません。
スポーツ紙独特の“憑依”文体
新聞記事は第三者視点でドライに書くのが通例なんですが、スポーツ紙の場合だと、特に試合の興奮を伝えるコラム記事なんかでは、記者がアスリートに感情移入するあまり、時々本人の気持ちになりきった「憑依」表現がちりばめられることが多いんですよね。文章の締めくくりになって、突然視点が本人に変わってしまうんですよ。たとえば、昨日の阪神の敗戦を伝えたスポニチの記事なんか典型例。
金本阪神 不運“判定負け”「完全にアウトに見えたけどね」
序盤の5点ビハインドを追いついた打線の粘りは実らず、連勝も3で止まった。だが指揮官は誰も責めない。「昨日まで3試合連続で0点で来ているんだからね。ひっくるめて『きょうは投手が…』とは言ってはいけないと思うし、思ってもいないしね」。長いシーズン、こんな日もある。切り替えて8日の第3戦を取り、3カード連続勝ち越しを飾ってみせる。
この記事は金本監督を中心に試合を振り返っているわけですが、冒頭から第三者的に記者が書いていて、突然最後になって太字のような独白をぶちこんでくるんです。まあスポーツ紙は景気良く盛り上げてナンボなんで、それでいいじゃないか、という意見もあるわけですが、私も野球記者やっていた頃に、取材相手の選手の一人称ぽく締めて書いたら「スポーツ紙の影響を受けすぎだろ」と、たしなめられたものでした。
一番「フラット」なスポーツ紙はあそこ
そういうわけで、ジャニーズ事務所のお家騒動のようなセンシティブな話題の記事を読むときは、スポーツ紙独特の記事中の視点の揺らぎもあることは念頭においてくださればと思います。なので、今後、本人なりきり的な憑依文体をお見かけしたら、その記者さんに対して、「君は君だよ」と思って差し上げてください。
なお、ジャニー発言を報じたスポーツ紙の中でも、フラットな姿勢に徹していたのが、我らが東スポです。
東スポというと、独自性豊かな紙面づくりのために「不真面目に取材している」ような印象がありますが、結構誤解されてます。安倍さんdisりで有名な某夕刊紙Gなぞより、はるかに綿密にやっていると思いますよ。もともと、ジャニーズ事務所に対しても距離を置いていますし、記者クラブ所属のスポーツ紙としては実は最も自由闊達にフェアに報道する姿勢があるので、私は一目置いております。
そういや、今朝、打ち合わせを終えて移動中にこんな看板もお見かけしまして。
中居くんたちの「華麗なる逆襲」は今後あるんですかねえ。ではでは。
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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