パチンコ不正改造問題その後①

宇佐美 典也

ども宇佐美です。

しばらくぶりですが、最近色々と進展が見られてきましたので、久々にパチンコ不正改造問題についてのお話を何回かに分けてしたいと思います。

1.これまでの話(そもそもパチンコ業界はどのような不正をしたのか)

日工組発表
(http://www.yugi-nippon.com/?p=5567 より)

まずは復習で「パチンコ不正改造問題 とはなんぞや?」という点からです。端的にまとめれば

「パチンコ業界が、業界ぐるみで日常的にパチンコの釘の角度を無認可で変更してギャンブル性を大きく高めるような違法改造を行っており、その結果日本中あまねく不正改造機だらけになった」

という話なのですが、詳しくは、警察の担当補佐の講話や私の過去のブログをご参考にしてください。私はパチンコ業界がやっていたことは基本的にVWや三菱自動車と同じことで、個々のパチンコ遊技機に関する性能を偽って消費者に提供していたという種のものと考えています。

自動車業界の場合は環境性能なり燃費なりを偽ったわけですが、パチンコの場合は釘の傾きを変えることで「役物比率性能」と呼ばれる性能を不正に操作していました。

ちょっと難しい話になりますが、前述の「役物比率性能」は法律上は「十時間にわたり遊技球を連続して発射させた場合において獲得することができる遊技球の数のうち役物の作動によるものの割合」と表されるのですが、要は「獲得した球のうち当たりによって得られた球の割合」です。法律上はこの上限は7割とされており、逆に言えば「獲得球のうち「通常時(当たりじゃない時)に得られる球の割合が3割以上」という義務が課されています。

役物比率が高いと普通の時は全然球が出ずに、大当たりの時にドバッと出る波の荒い台になるので、必然的にギャンブル性が高くなります。そんなわけでギャンブル性が過度に高まらないためにこの規制があるわけです。

一方で業界側の立場としてはギャンブル性を高めれば刺激は高まりますから、パチンコ業界としてはこの役物比率性能の規制を骨抜きにするために、釘の特性を利用しました。パチンコの性能というのは釘の角度に大きく左右されます。「釘を読む」という言葉があるくらいです。そんなわけでパチンコメーカーは警察の試験(「検定」といいます)を受ける時は特別な釘の配置にして法律上の基準を満たすようにして、その後実際にホールに設置する時は営業用の釘に調整し直しました。

なんでそれがわかったかというと「警察の指導で業界団体が昨年全国で一斉に調査を行った結果、一台も検定時と同じ性能の遊技機がなかった」という事情からです。こういうことが判明しては警察も黙っているわけにはいきませんし、業界としてもさすがにしらばっくれるわけにはいけないので、2015年末にパチンコメーカーの業界団体である日工組を中心に業界として声明を出し、対策を講じることを宣言しました。

その内容の柱は、

  • ①可及的に速やかにギャンブル性の高い機械を回収・撤去します
  • ②パチンコ業界としてもう釘をいじらないようにします
  • ③ギャンブル性が低い遊技機を開発します

というものでした。パチンコ業界がこの声明を出したのは昨年(2015年)の12月26日です。監督官庁である警察も一応ここで様子を見ることとしました。若干正確性にはかけますが、ここまでがこれまでの話です。

2.今の話(パチンコ業界はどのような対策をとったのか)

ではこの問題その後どうなったのか、というのがここからの話です。業界が自ら宣言した対策の進捗状況を見てみましょう。

<①ギャンブル性の高い機械を回収・撤去します→×:あんまりやる気ない>

まず最も重要な回収・撤去の動向を見てみましょう。
2016年4月末のパチンコ業界団体の発表によると今の所回収された遊技機は6万台だそうです。他方で本来回収・撤去対象とすべき機械は現在市場に設定されている機械のほぼ全て(350万台程度)ですし、業界団体の主張に基づいて低めに見積もっても90万台程度です。

「可及的速やかに回収・撤去」と言いながら5ヶ月経ってこのうちの6万台しか回収・撤去していないわけで、本当のところ業界団体がやる気がないというのは明らかです。結局自分の財布が痛まないペースでゆるゆると台を交換しているに過ぎないというのが現状です。

もともとパチンコの設置許可(認定)というのは三年ですから、多分このまま三年程度かけて台をいれかえていこうということなのでしょう。

 

<②もう釘をいじらないようにします→×:まだいじってる>


では2点目の「もう釘をいじらない」という宣言はどうでしょう?
それを確認すべく先日、日拓エスパス西武新宿駅前店でパチンコを売って簡単に調査をしてきました。ここですね⬇︎

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(筆者撮影)

この店で今最も流行っている「CR北斗の拳6」を1000球(4000円分)ほど打ってみました。なお対象としたのは1063番台⬇︎です。(写真は打ち始める前)

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(筆者撮影)

結果としては以下の通りでした。

①ヘソ入賞    :72回
②一般入賞口入賞 :2回
*1000円ごとの入賞数(ヘソ15→一般1-ヘソ20→ヘソ12→一般1-ヘソ25)
③合計払い出し個数:3×72+7×2=230個
④想定役物比率* : 1-(230/(1000×0.95))≒75.8%
(*還元率を95%と想定)

ということです。やや雑な議論ですがパチンコにはほとんど技術介入性がないので、仮に役物比率の平均を法律上の上限の70%として標本が標準偏差が3%くらいの正規分布に従うとすると、この台は95%くらいの確率で釘をいじっているということになります。

まぁそりゃあたり前の話でメーカーがそもそも釘をいじること前提で作った台を回収せずに放置している状況ですから、ホールとしても営業のために釘をいじり続けるしかないという 当然の結果が今起きています。メーカーとしてはホールに責任を押し付けて知らぬ顔しているわけです。本来ならばこのような釘の水準で営業したら、営業停止処分ものなのですがね。。。

そんなわけで結局今でもホールは釘をいじり続けているのが現状です。なおこのホールでは私が見る限り業界が喧伝している「のめりこみ防止に関するポスター」が貼られていなかったことを併せて申しておきます。

 

<③ギャンブル性が低い遊技機を開発します→△:これからの話だけれど。。。>

最後のギャンブル性の低い遊技機の開発ですが、こちらはまだ開発段階で評価する段階ではないのかと思っています。ただ全体の傾向としてはこれまで大当たり確率を1/400としていたものを1/320に下げる程度で、機器開発の方向性に関して大きな変更はなさそうです。いずれにしろこちらの評価はしばらく待つことにしたいと思います。

3.総括(結局パチンコ業界は反省していない)

このように、

私としては今回の釘問題が明るみになって以降のパチンコ業界の対応は、口では「可及的速やかに回収・撤去」だとか「もう釘はいじらない」とか言って「頑張っているふり」をしつつ、時間を稼いでほとぼりが冷めるのを待っているに過ぎず、一言でいえば「反省したふりをしてサボタージュをしている」と評価しています。

そんなわけで、このままで問題を終わらせるわけにはいかないのでギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表なり、幾人かの国会議員の方と共に、制度改正に向けて現在働きかけているところです。またそれに関して前向きな動きも起きつつあります。

その点に関しては次回まとめたいとおもます。
ではでは今回はこの辺で。

(5/10 17:40追記:指摘があり、役物比率の計算を修正しました。
17:56追記:1000円ごとの入賞数)


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2016年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。