昨日、ヘイトスピーチ法案が本会議で可決され、参議院を通過しました。
今後、衆議院での審議も行われ、今国会で成立する見通しです。
この法案は、日本外の出身者に対する不当な差別的言動を解消することを目的としたもので、相談に応じて紛争の防止・解決を図る体制を整備することや、教育・啓発活動等に取り組むことなどを国の「責務」として明記しています(地方公共団体に対しては「努力」目標)。
しかしながら、「禁止」や「罰則」についての規定はありません。
政治的な表現への萎縮効果を懸念してのことです。
ただ、そのために本法案は実効性がないのではないかとの心配の声も上がっています。
表現の自由への制限、特に内容を規制することは憲法21条1項との関係があって難しいのは確かです。国家権力が個人の表現活動に介入することは、極めて抑制的であるべきです。
しかし、ヘイトスピーチによって罵倒されている側は恐怖を感じ、著しく平穏を害されています。このことを放置してよいはずがありません。
当たり前ですが、憲法上の権利があっても絶対的にすべてが認められるわけではなく、他者の権利を侵害する場合には制約を受けます。重要な利益が対立する場合の調整は困難ですが、受忍限度を超えるような表現は法的に禁止すべきです。
現状ではヘイトスピーチが、生命、身体、自由、名誉又は財産に対しての脅迫のようなものであっても、それが特定された人に対するものでなければ(特定の民族等へのものであれば)、脅迫罪として検挙することができないのです。
本法案は最初のステップです。
今後も改善が見られない場合、繰り返されるものや度を過ぎるものに関しては罰則規定を検討する必要があると考えています。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年5月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。
お知らせ:ダイヤモンドオンラインで新連載「松田公太情熱対談 革命はアウトサイダーが起こす」スタート!第1回のゲストはLINE元CEOの森川亮さんです(バナーをクリックするとお読みいただけます)。
松田公太さんの近著「愚か者」(講談社)、好評発売中です。