日本版CIA創設論、トランプの台頭でプチ現実味⁉︎

新田 哲史

どうも新田です。東京がトリプル選挙になったら自治体的には、まさにミッション・インポッシブルです。ところで昨日、日経新聞で「日本のテロ対策は万全か」(リンク先は有料会員のみ)をテーマに2人の論客が持論を語っていたのですが、そのうち、警視総監等を歴任した元警察庁キャリアの吉野準さんが「日本版CIA設置を急げ」と提言をしているのが目にとまりました。

アメリカのCIAやイギリスのMI6、イスラエルのモサドを模倣した組織をいきなり導入できなくても、情報の網を貼って、わが国で悪いことをやらかしに潜入する不届き者の動向を把握し、事前に対策を練るには、インテリジェンス機関のノウハウを持ったプロフェッショナルが必要というのは、一般国民でもスパイ映画をそれなりに何度か見たり、あるいは現実に、公安警察が、ロシアや北朝鮮、中国の工作活動を摘発したニュースを見たりすれば、なんとなく認識できることと思います。

ところが従来の日本社会では、吉野さんのようなご意見は、ある種のポジショントーク扱いをされてきました。「提言」どころか「放言」と見なされても仕方なかったのが、“平和国家ニッポン” の実状。もう若い人は知らないと思いますが、私が小学生だった80年代当時、中曽根内閣でスパイ防止法を制定する動きがあったのですが、冷戦のスパイ合戦真っ只中にもかかわらず、野党やマスコミ等の左派勢力の反対であっけなくつぶされてしまいました。まあ、国家機密をどう守るかというルールづくりですらNGのご時世でした。

そのあたりの流れは21世紀になっても断片的に残ってはいて、記憶に新しいところでは、3年前の特定機密保護法制定の折にも揉めましたよね。その翌年以降の集団的自衛権を巡る論議を見ていても、日本では、安全保障や危機管理の制度一つ作るにしても、恐ろしいほどの政治的パワーが政権側に要求されるのは変わっておりません。

さらにアメリカにとっても、日本があまり巨大な対外情報機関を自前で持つことは、警戒する側面もあったので、そうした国内的、国外的な政治事情から、自前の対外インテリジェンス機関を作るかどうか現実の永田町日程に載せること自体、「無理ゲー」な話であり、吉野さん、あるいは古くは佐々淳行さんあたりの提言は、国際的には現実的な提言でありながら、国内的には理想論の域に置かれていたわけですが、まあ、海の向こうで、このオッさんが登場したことでゲームのルールが変わる気配も出てまいりました。ははは。

米大統領選 トランプ氏の米軍撤退発言 日本政府内から困惑の声(毎日新聞 16年3月29日)

トランプの放言こそ選挙戦術ありきのポジショントークなので、実際に政権の座に着いたら、それなりに現実的に軌道修正してくると思いますが、“トランプ政権”誕生なら程度の差はあれ、内向きのモンロー主義志向になるのは衆目一致するところ。アメリカの安保戦略が将来的に米軍のアジア太平洋地域への関与を弱めるという方向に舵を切るのであれば、日本が自前で安全保障の情報収集強化に乗り出しても、文句を言う筋合いもなくなりますし、その流れで日本版CIA創設の動きとなると、少なくとも国外的なリミッターは外れるのではないでしょうか。

トランプというカードの切れ味が鋭さ、そこかしこの方面でゲームチェンジを働きかけつつあります。ひゃー、大変な時代(汗)

ちなみに個人ブログの方では、下記のような関連記事を書いております。日本のテロ対策、個人的には、そうした情報機関の設立も重要ですが、「安保法制に劣らぬ“おにぎり”の平和力」で紹介した「TABLE FOR TWO」のように、ソフトパワーで平和を作り出すNGO、民間の施策も合わせて強化すべきと考えております。

ではでは。

新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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