ダメ面接官は短時間で人を見抜こうとする

アゴラ

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面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えする好評連載「ダメ面接官の10の習慣」。第9回のテーマは「ダメ面接官は短時間で人を見抜こうとする」です。

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※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。

面接の精度はそれほど高くない

結論から申し上げますと、人を短時間で見抜くことなどできるわけがないと思います。少なくとも私にはできません。しかしながら、「人なんて第一印象で大体のことはわかるよなあ」という言葉をいろいろな場面で聞きます。そのたびに、勇気のない私は否定したくなる気持ちを表に出せず、悩んだものでした。

面接に関する研究や論文などを見ると、「面接という選考は精度が低い」という結論が大半です。そこで、面接の精度をできるだけ高めたい企業は、たとえば「構造化面接」(質問項目などを構造化し安定的な情報収集を行うことにより、人の心理的バイアスを少しでも減らそうとする面接方法。Googleも採用!採用ミスマッチを防ぐ「構造化面接法」を実践するための3つの重要ポイント)などの手法を取り入れるのです。だから、何も対策を行わなければ、短時間の面接で見抜くのは無理だと思います。

面接の精度を下げる「心理的バイアス」のいろいろ

面接の精度を下げる要因の一つに、「心理的バイアスによるゆがんだ認知」が考えられます。「心理的バイアス」にはさまざまなものがあり、この連載でも取り上げてきました。その一つが「確証バイアス」です。これは、「人は一度抱いた仮説や信念を検証する際に、それを支持する情報ばかりを集めて、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと」を言います。要は「人は見たいものしか見ない」ということです。古代ローマの将軍、政治家のカエサルをはじめ、いろいろな人がこの「確証バイアス」の存在について言及しています。

「人には自分と似たタイプの人を好む傾向がある」という意味の「類似性効果」も、「心理的バイアス」の一つです。「類似性効果」が見られる面接官には、自分と異なるタイプの候補者を心理的に評価しにくい傾向が見られるため、もし優秀な人材だったとしても落としてしまう可能性があります。組織の創造力を高めるために多様性のある組織をつくりたいと考えている経営者や人事責任者からすれば、面接官が自分と似たような候補者ばかり評価するのは、たとえその候補者が優秀だったとしてもマイナスかもしれません。

「ハロー効果」も面接の精度を下げる心理的バイアスです。「ある対象を評価する際に、顕著な特徴に引きずられて、ほかの特徴についての評価がゆがめられる現象のこと」を言います。抜群に秀でたスキルを持つ人は、ほかの能力も高く評価されやすいということです。このほかにも多数あって、とにかく人の認知には「わなだらけ」なのです。

ダメ面接官が「わかる」の意味を取り違えていないか?

それなのになぜ、多くの人が「人なんて5分でわかる」と言うのでしょうか。考えられる理由の一つは、「『わかる』の意味を取り違えているから」です。

「わかる」の一般的な意味合いは「(客観的)現実を認識する」ということです。しかし、面接官が使う「わかる」はそうではなくて、「心理的(主観的)現実を認識する」、つまり「5分で、その人に対する人物像の『仮説』ができあがる」ということを意味しているのでしょう。そうであれば、私も「人なんて5分でわかる」という考えが理解できます。

人は人と出会ったとき、短時間のうちに必ず何らかの印象を持ちます。それこそ5分もあれば、「この人はこういう人なのかな」という具合に何かしらのイメージが浮かぶでしょう。しかし、それはあくまでも自分だけの「仮説」であり、「真実」ではないのかもしれません。面接は、このすぐできあがる「仮説」を候補者からさまざまなエピソードや意見、主張などを聞いて検証する作業であることを、多くの面接官がわかっていないのです。この手の誤りをする面接官は「思い込みの激しい人」であり、連載第4回(ダメ面接官は自分と似たタイプを評価する)で書いた「自己認知力の低い人」と同じです。

「偉い人」が言うのは、意思決定スタイルに関係?

百戦錬磨の経営者や事業責任者などのいわゆる「偉い人」にも、「人は短時間でわかる」と言う人がいます。私はどんなに偉い人が言おうが間違いは間違いだと思いますが、なぜ彼らはそう言うのでしょうか。

おそらくですが、彼らは日々、情報が不十分でも素早い経営判断を求められています。それができなければ職責に応えられないため、少ない情報でスピーディーにビシッと決断する意思決定スタイルになり、それを人と接するときにも適応しているのだと思います。

人事は「人は短時間ではわからない」ときっぱり主張して

「人は短時間ではわからない」。誰がなんと言おうと私はそう思います。「人は短時間でわかる」というダメ面接官は、面接を早く切り上げようとしますが、早く切り上げた面接の場に、自社にぴったりの逸材がいるかもしれません。必要な人材と出会えたのにすれ違っていては大きな損失です。人事の皆さんはぜひ勇気を出して、自信満々な「人は短時間でわかる」派のダメ面接官に、「人は短時間ではわからないぞ! もうちょっといろいろ聞いてみて判断してください」と主張し続けてください。それだけで、面接の精度が変わるかもしれませんよ。

著者プロフィール: 曽和 利光 

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リクルート、ライフネット生命、オープンハウスと、業界も成長フェーズも異なる3社の人事を経験。現在は人事業務のコンサルティング、アウトソーシングを請け負う株式会社人材研究所の代表を務める。

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

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編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ダメ面接官の10の習慣」を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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