中国人の爆買い、何時まで?

岡本 裕明

先日、成田空港の免税店を通りかかったところ、「東京ばな奈」が山積みになって人だかりも少ない感じがしました。

中国人の爆買いに赤信号が灯っているのでしょうか?個人的には「終わり近し」という気がいたします。

海外で買い物をする動機は何でしょうか?手に入らない、安い、本国より先に入手できる、旅行自慢のどれかだろうと思います。私も80年代に海外旅行に行った際には重い酒を土産に買ってきましたが、その理由は珍しいのと旅行自慢だったと思います。日本人は土産を近所や知り合いに配る傾向があったのですが(もう過去形でしょうか)その理由は「皆中流」の枠組みの中でほんのちょっとの優越感やおっそわけだったと思います。

中国の爆買いも同様で「私も海外旅行に行けるようになった」という自慢が主たる理由だろうと思います。が、近所や知り合いに配る土産も1,2回なら良いのですが、年中となると「嫌味」になります。今の中国の爆買いは嫌味の領域に入りつつあったところだったと思います。

そこに習近平国家主席の警告通り規制がかかりました。4月8日付で土産に対する関税を大幅に引き上げました。酒、化粧品は50%から60%へ、時計は30%から60%、食品が10%から15%などです。更に総枠規制もかけ、年間2万元(約30万円)を超えると個人消費枠から貿易枠規定の適用となり、高い税率が付加されます。

その背景は中国の資本流出の一翼を担っていた旅行支出の歯止めもあるでしょう。旅行収支は年間1兆円規模の赤字とされ、実態がかなり厳しいとされる中国の資本流出に歯止めをかける必要があったと言えそうです。つまり、政府による爆買い規制は中国人の買い物マインドを一気に冷やす効果があると言えます。

実は爆買いが減って困るのは日本だけではなく、欧州の高級ブランドの方が直接的な影響を受けています。もともとは反腐敗運動がきっかけでじわっと真綿で首を絞めるような感じでしたが、ここにきて青色吐息のブランドも出てきていると報じられています。高級ブランドは世界不況のあおりで全般的に売り上げが伸び悩む中、中国の新興成金を中心に売り上げを伸ばしてきましたが、今では中国国内での閉店が相次いでいます。

スイス高級時計メーカーも同様で職人の首切りも行われているところもあります。時計メーカーの職人とは寿司屋の寿司職人と同じで技術習得に時間がかかりリストラとしては最も手をつけたくないところであります。そこまで踏み込まねばならない状況に陥っているのですから経営状態は想像に難くないでしょう。日本では2013年に高級時計が前年比3割以上売り上げが伸びたと大きく報道されていましたが昨年は9%減となっており、日本人の「株高高級時計ブーム」も2年と持たなかったわけです。

個人的には中国人が爆買いをするという発想がそもそも良く分かりませんでした。中国人は懐が堅いとされ、消費が伸びず、中国政府として内需拡大の為にどうやってお金を使わせるか、頭を痛めていました。中国での消費が伸びない理由は社会保障制度が十分ではないことと社会の仕組みに信頼感を持っていませんのでいつ、突飛なことが起きても驚かないよう、準備をしているためとされています。

もっとも今回の爆買いや世界中の不動産への支出は中国元への不信感で元の価値があるうちになるべく違うものに換えておくという発想もないとはいえないでしょう。ただ爆買いと不動産への投資は性格が違い、爆買いについては先細りになる気がいたします。

銀座等では引き続き外国人の姿は多くみられると思いますが、ビジネスは思ったほど伸びないと思われ、爆買い期待で大型投資を行ったところは影響が出てきやしないか心配でしょう。

基本的に欧米人のお土産需要はあまりなく、アメリカ人やカナダ人に「Youは何を買いに日本へ?」と聞けばでっかく「一番」とプリントされているTシャツとか土産物屋に吊るしている浴衣を買って大喜び、というレベルです。先日も土産物店で浴衣を見ていたアメリカ人らしき老夫婦が「サマーバージョンのキモノ」と言って娘にどうか、と話していたのが印象的でした。

訪日客は引き続き高水準を保つと思いますが、爆買いという言葉は聞かれなくなっていくかもしれませんね。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月18日付より