5月20日・21日にG7財務大臣・中央銀行総裁会議が仙台の温泉地である秋保で開催される。すでに18日夜、仙台空港にFRBのイエレン議長など会議の参加者たちが到着している。18日から19日にかけての米国市場では6月のFRBの利上げ観測を強めた格好となったが、その主役はいま日本に滞在している。
20日からの一連の日程には、各国の大臣たちが東日本大震災の被災地を視察する予定も組み込まれているそうであるが、もちろんここで今後の為替政策等についても話し合われる。
G7のメンバーは日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの7か国の財務大臣及び中央銀行総裁となる。これに加え、欧州委員会(EC)委員、欧州中央銀行(ECB)総裁、ユーログループ議長が出席しているほか、IMF専務理事、世界銀行総裁など、国際機関も招待されている。
つまり米国からはルー財務長官やイエレン議長、欧州からはECBのドラギ総裁やドイツのショイブレ財務相、英国からはオズボーン財務相、イングランド銀行のカーニー総裁、そしてラガルドIMF専務理事、日本からは麻生財務相、黒田日銀総裁などが秋保温泉のホテル佐勘に宿泊して協議を行う。
もちろんG7のメインイベントは5月26日・27日の伊勢志摩サミットとなる。英国のEU離脱問題、ドイツを含めての財政出動の可能性などの関心はこちらで高まると思われる。
ちなみにドイツのショイブレ財務相はG7を前に、NHKの単独インタビューに応じ日本が各国に呼びかけている財政出動について「ドイツ経済はここ数十年で最もよい状態にある」と述べ、ドイツでは不要だという認識を示したそうである。日本が望む協調した形での財政出動はなかなか難しいように思われる。
ただし、通貨問題や今後の日米欧の中央銀行の金融政策の行方などに関しては秋保での動向が注目されよう。
米財務省高官が16日に最近数か月の円の動きは秩序的だと述べていた。これに対して浅川財務官は16日に、外国為替市場の動向に関して「過度で無秩序な動きは経済に悪い影響を及ぼしうる」と強調していた。日米が為替動向を巡って火花を散らしている構図となっているが、米国政府としても大統領選挙も控え、米利上げなどによるドル高の動きは阻止したいところか。もちろん日本政府としては年初からの急速な円高の動きを危惧しているものと思われる。この決戦の行方についても日本で開催されるG7の動向が気になる。
そこに加えて市場の関心が高まりそうなのがFRBの6月の利上げの可能性と日銀の動向であるように思われる。市場はあらためて6月のFRBの利上げを織り込んできたが、イエレン議長がその市場心理にどのような働きかけをするのかも興味深い。今回はバランスを意識して、前向きながらもやや慎重さを示すことも考えられる。
そして問題は日銀の動向か。タイミングとすれば6月15、16日の金融政策決定会合で追加緩和を模索してもおかしくはない。FRBの利上げにぶつけられる上、政府の財政政策に呼応するかたちで金融政策を発動できる。しかし、米利上げにぶつけることは明らかな通貨安狙いにみえる。今回のG7でもそのあたりは警戒されるのではなかろうか。
政府としては参院選を前に国民の評判が芳しくないマイナス金利政策の深掘りについては難色を示しているようにも思われる。そうなると仮に追加緩和を検討するとして、量で勝負となり、これはこれで市場に緩和策の限界を見透かされる可能性もある。
そもそも金融政策で何が出来るのかという問題はあるがそれはさておき、秋保の温泉につかりながら財務大臣・中央銀行総裁会議がどのような協議を行うのかは、今後の日米欧の中央銀行の金融政策の行方にも影響を与えかねず、なかなか興味深い。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。