こんな金銭感覚の政治家は前代未聞
舛添都知事のスキャンダル追及では、どうしてこんなちまちましたレベルの問題を辞任騒動に発展させたがるのかと、当初は疑問に思っていました。斡旋収賄の疑いのある甘利議員のほうが事件に発展するならば、はるかにスケールが大きいでしょう。舛添知事の場合、明らかになっているのは何十万円、何百万円のケタでしょう。
公用車での別荘通いに端を発した今回の問題では、ちょっと前の知事らも恐らくやっていただろうし、いづれ追及が立ち消えと、想像していました。企業のトップにとっては、送り迎えはごく当たり前の話でしょう。トップというのは、政治でも民間でも、公用なのか私用なのかの区別がつけにくいことが多い存在だからです。それが追及は息切れするどころか、これでもこれでもかと、新しい材料が出てきています。
どうもこの人物の問題は、次元が違う人物ですね。結論は、公費をめぐるスキャンダルというより、本人の金銭的な変質者のような行動こそが問題なのだと、私には思えてきました。次々に週刊誌があばくにつれ、それぞれがあまりにも、けちけち、ちまちましており、変質的な行動のほうに焦点が移ってしまいました。完全に週刊誌の得意分野です。
自分のカネは極度に使わない
2台の車を買い、1台を別荘地の登録にしていたそうです。画廊やアートギャラリーでは、美術品、書籍、版画などを買い、「日仏交流の資料」として記載するなど、常識人ではありません。一般の人なら自分のポケットマネーで買います。この人は自分のおカネを使うことを極度に嫌っていたのでしょう。金銭的な異常者ですね。
これまで政治資金の使途の不正、公費の私的流用の事件は多くありました。今回も、公費や政治資金の使い方にルール違反、法律の規制違反の問題はあっても、多くがゴミみたいな話です。そのごみが積りに積り、そのごみの山の中に、この人物の異常性が潜んでいることが分かりました。都知事に座る以前の人物であり、人間として適格者ではありません。
都議会も追及を強めるでしょう。市民団体も行動を起こすでしょう。知事候補に推薦しておきながら、「猛省を促す」と批判している自民党幹事長も、今になって自ら「猛省」していることでしょう。多くの人たちは、そのころから舛添氏の異常性は分かっていたといいます。
事件化し預金通帳の調査を
都議会で与党の自公が見放せば、それで終わりです。議会で立ち往生します。そう遠くない将来、知事不適格者として辞職に追い込まれるでしょう。できうれば立件して、公費・公金の使途調査に並行して、個人の預金通帳も調べあげるべきでしょう。今後のためにも、前代未聞の金銭的な変質行動を明らかにしておく意味はあります。
学校跡地を韓国人学校向けに優先的にあっせんし、韓国嫌いで不満を持つ人たちがまず動き始め、内部告発を始めたのが発端でしょう。さらに都庁における舛添知事のふるまいをにがにがしく思っていた都職員らが告発に協力していますね。舛添氏に不信感を抱いていた「新党改革」当時の関係者も追随しているでしょう。
異様な金銭感覚に加え、舛添氏を支える人が次々に離れてしまい、苦境に落ち込んだ瞬間、叩く側に回ったということでしょう。日ごろから自分を信頼してくれる人が周辺にいなかったか、いなくなったかに違いありません。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。