5月20日に日本証券業協会が発表した4月の公社債投資家別売買高によると、都銀は約4.4兆円の売り越し、外国人は約3.7兆円の買い越しとなった。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。
4月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別
都市銀行 43578(6890、5736、31425)
地方銀行 -5931(1160、-4917、-223)
信託銀行 -7342(-2876、740、-3486)
農林系金融機関 7864(3159、3579、-1214)
第二地銀協加盟行 -769(-113、-145、-1214)
信用金庫 1170(1123、282、379)
その他金融機関 -315(-410、-891、1552)
生保・損保 -188(-2433、2625、464)
投資信託 -2517(-411、-226、-143)
官公庁共済組合 -239(58、0、0)
事業法人 -247(58、9、8)
その他法人 -99(480、110、136)
外国人 -36565(328、-9142、-27271)
個人 243(-24、39、5)
その他 -17587(-3659、8167、16559)
債券ディーラー 375(72、-42、397)
都銀は3月は買い越しとなっていたが、再び売り越しとなり、中期ゾーンを中心に大量に売り越しに転じた。期初ということで益出しの売りとみられる。
これに対して海外投資家は中期ゾーンを主体に大幅買い越しとなった。長期債も買い越してはいるが、超長期債は売り越している。
差し引き売買高ではなく買付額で見てみると外国人投資家の存在感が非常に大きくなっていることがわかる。全体に占める海外投資家のシェアは24.3%と四分の一近くとなっている。債券ディーラーの分を除いてみると48%とほぼ半分のシェアを占めていることになる。
今年1月の日銀によるマイナス金利政策の導入により、債券市場の参加者が限定的になっていることがこれからも伺える。日銀トレードに絡んでの日銀と業者、そしてスワップに絡んでマイナス金利でも購入可能な外銀を中心とする外国人投資家が日本の国債市場の中心となり、メガバンクなどの存在感が薄れつつある。
海外投資家の比重が大きくなるのは悪い話ではなく、財務省もIR活動などを通じて海外投資家による日本国債の購入を促そうとしていた。しかし、いまのような歪な国債投資家の構図はリスクも孕む。比較的足の速い海外投資家の動向次第では、何かしらのきっかけで流動性が枯渇している債券市場が波乱含みの展開となる懸念もあるためである。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。