36年ぶりに開催された第7回北朝鮮労働党大会は「核保有国」を改めて強調する一方、国民経済の発展を掲げた「核開発」と「経済発展」の「並進政策」を世界に向かって宣言し、党大会最終日に金正恩第1書記を党最高位として新たに設置された党委員長に奉って幕を閉じたばかりだ。
▲北が外国代表部に郵送した第7回党大会の「公報」(2016年5月21日撮影)
ところで、海外の北朝鮮大使館が党大会の決定事項をまとめた公報(Bulletin)を現地の外国代表部(大使館)に郵送していたことが明らかになった。北大使館が他国の大使館宛てに公報を郵送するということはこれまでなかったことだ。それだけに、北側の意図についてさまざまな憶測が流れている。
北大使館から公報(2頁)が届いた外国代表部は何事かと驚いたといわれる。当方が住むオーストリアの日本大使館にも公報が送られたはずだ。金正恩党委員長は、海外の自国大使館を通じて外国代表部に自分が党委員長に就任し、「金正恩党委員長時代」に入ったことを宣布する狙いがあったはずだ。
具体的には、朝鮮中央通信(KCNA)の10日平壌発の記事だ。KCNAの記事は日本でも既に報じられているが、ここでその概要を簡単に紹介する。
記事のタイトルは「Kim Jong Un Elected Chairman of WPK」(金正恩氏を朝鮮労働党委員長に)だ。「第7回朝鮮労働党大会は尊敬すべき指導者金正恩氏をわが党の最高位に選んだ決定を公布した」という書き出しで始まる。
金正恩氏はわが党と国民を主体思想の革命的道に導く最高指導者であり、故金日成主席、金正日総書記の功績を永遠化する新たな章を開き、偉大な指導者の革命的な歴史を継承した指導者という。
興味深い点は、金正恩氏が継承した革命的な道を「金日成主義―金正日主義」(KimilsnugismーKimjongilism)と表現していることだ。そして「彼の指導の下で党の結束が強化された。全ては金正恩氏の偉大な指導の尊い成果だ」というわけだ。
そして公報の最後では
「Absolute is the prestige of Kim Jong Un boundlessly respected and praised by our people and progressive mankind」と、「法王の不可謬説」を主張してきたローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁も思わず赤面するのではないかと思うほどの美辞麗句で金正恩党委員長を称賛し、「偉大な白頭山民族の神々しい未来は金正恩党委員長に忠誠を尽くすことで実現される」というわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。