現役期間中に住宅ローンを完済するとして、そのときにも、住宅には、価値が残る。退職して、年金生活者となったとき、この住宅価値を計画的に取り崩すことにより、追加的な生活資金を得る仕組み、それがリバースモーゲージである。
リバースモーゲージとは、定期的な小口融資を積み上げていく、あるいは一括に融資して、住宅の売却代金によって、一括弁済をなす仕組みである。さて、深く考えると、これは、本当に融資の概念の枠に収まるものであろうか。なぜなら、ここでは、弁済の裏付けは、債務者の所得ではなく、債務者の資産になっているからである。
弁済の裏付けが資産であることについては、資産を担保にした融資である以上、当然であると思われるかもしれないが、担保が活きてくるのは債務不履行があったときだけだから、普通に弁済される限りにおいては、担保は働かないのである。
融資の本旨は、あくまでも、債務者の所得に基づく弁済能力を裏付けとしたものなのであって、担保資産は、万が一の債務不履行に備えた保険にすぎないはずなのである。
実は、リバースモーゲージは、形式は住宅を担保としたローンであるにしても、実質は、住宅を小口分割していく売却していく、あるいは、先の日付で一括売却して、代金の先払いを受けるのと同じことである。
ならば、通常の住宅ローンも、住宅を細分化して、順次分割取得するのと同じではないのか。あるいは、住宅の割賦販売ではないのか。リバースモーゲージは、通常の住宅ローンの割賦販売を逆転させたもの、故に、リバースなのではないのか。
割賦販売というのは、実は、その名の通り、商品を分割して販売することだが、まさか、商品を分割して、細分化された単位ごとに、所有権を販売する取引にはできないので、先に全体の取引を終わらせて、所有権を移転させ、代金の分割弁済という金融機能に転換して、分割取引を再構成したものである。
ならば、リバースモーゲージはもちろん、通常の住宅ローンにしても、銀行等の金融機関にやらせるよりは、住宅仲介業者にやらせるべきではないのか。あるいは、いっそのこと、銀行等の金融機関に、住宅仲介をやらせるほうが便利なのではないか。
要は、顧客の利便性である。顧客の視点にたち、金融機能の原点にたち返った議論が必要なのである。
森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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