サウジ・エネルギー相の日本語表記 ※追記あり

岩瀬 昇

筆者はその昔、会社派遣の研修生として北京語を学んだ。香港大学で1年、その後は台北に移り、北京語を実地に使いながらの実務研修を1年。その時に北京語のことを英語で「マンダリン」と表するいわれを聞いた。

時は清朝の初期、ある英国人商人が中国南部、広州付近で貿易業務に勤しんでいた時の話だそうだが、ある時、高官風の身なりをした中国人が、それまで聞いたことがない中国語を話しているのを目にした。英国人商人は、そばにいた召使に英語で「彼がしゃべっているのは何語だ?」と聞いた。召使は、「彼は誰だ?」と聞かれたのだと勘違いして「彼は満人のお役人でございます。他是満大人(ターシーマンダーレン)」と答えた。こうして「北京語」が「マンダリン(mandarin)」という英語になった、というのである。

ことの真意、是非は別として、言葉というものは時間とともに人々の常識と化していく一例だろう。

エネルギーブログを書いていて、困るのが英語表記をどのように日本語で表記するか、だ。中国語は素養があるので、たとえば習近平(しゅうきんぺい)を英語でXiu Jin Pingと表記されていても大丈夫だが、英語、中国語(さらにいえばタイ語も大丈夫)以外の言語の場合は困る。仕方なく他のメディア等が使用している表記を使わせていただくことになる。

その一つの事例が、サウジの新エネルギー相に就任したKhalid A. al-Falihだ。この英語表記もアラビア語からの置き換えなのだが、筆者は他のメディアで多用されている「ハリド・A・アル・ファリハ」から、ファリハ・エネルギー相と表記してきた。ところがこれはアラビア語の原音からは遠い、と知人から指摘を受けた。知人いわく、「ファリハ」で定着してしまうのは困るので、ぜひ訂正して欲しい、というのだ。彼が会長を兼務しているサウジアラムコの日本法人がHPで使用している「カーリド・A・アルファレ」から「アルファレ・エネルギー相」と表記するのが相応しいらしい。

念の為に外務省のHPを調べてみた。適当なものが見つからなかったが、在サウジの日本大使館のHPに、サウジの閣僚名簿が掲載されている。それによると「ハーリド・ビン・アブドラアジーズ・アル・ファレフ技師」となっている。知人は、この閣僚名簿はときどき訂正される上に、そもそも「アラビア語の最後の子音を発音するのは無理がある」という。

外務省本省がどのような表記をするのか分からないが、本ブログでは当面のあいだ本人が会長を兼務しているサウジアラムコの表記をベースに「アルファレ・エネルギー相」と表記するので、ご了解願いたい。

あッ、そうだ。最終校正中の第三作『原油暴落の謎を解く』(タイトルはこれに決まった由。6月20日、文春新書より刊行予定)内での表記も修正しなければ!


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年5月26日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

※追記(28日21時30分)本記事のテーマである日本語表記について、池内恵さんから指摘を受けた経緯について、岩瀬さんが訂正を含めた補足を説明しています。こちらをご覧ください。