どのような人なのか不勉強で知らないが、John Dizardという方がFTに投稿して、掲題の見方を示している。”Something is not quite right in the market for physical oil” (May 27, 2016 8:13pm)というタイトルで、”Supply disruption is not enough to create a really out of control bull market, says John Dizard” というサブタイトルがついている。検索してみたら、FTなどの有力紙に定期的に投稿している著名な投資関連のコラムニストの方のようだ。
今週、相場を50ドルに引き上げた要因は一時的なもので(基本的な需給バランスはいまだ供給過剰だから)市況は近々、一度大きく下げるだろう、という点は同感だ。だが、資本投資が大幅に減少しているので市況は上向く、との見方にも賛成だが、来年中(あるいは1年半以内)には70ドルになるだろう、というのは、時期はもう少し遅いのでは? 価格も一時的でなく持続的水準としてはもう少し下では? と判断している。あまり書くと、次作『原油暴落の謎を解く』の「肝」に触れるので、ここでは控えさせていただくがご容赦賜りたい。
結論として、中期的な勝者は国営石油の経営陣と陸上在庫を積み上げている民間投資家(private investors)だろう、としている。市況判断から、この結論になることは理解できる。
同じ論法で行けば、日本の石油会社も近々「勝者」になれるはずだ。
他にも、たとえばカナダの山火事の影響は生産施設ではなく、労働者の住宅が被害に遭い操業ができないだけだから、短期的に修復可能だ、ベネズエラは外貨不足から、生産している超重質油を(輸出可能な品質にするために)ブレントするための軽質原油の輸入ができないので、生産はさらに30万B/D減るだろう、あるいは、米国の原油生産は、EIAは今年(前年比)50万B/Dの減少とみているが69万B/D減ると見ている専門家もいる、など興味深い箇所が多いので、ぜひ原文をお読み戴きたい。
彼の論考の中で引っかかったのは、最後の文章だ。つまり、陸上の石油タンクは、自らが長期的に使用するためではなく、再販(resaleとなっているが、賃貸もあるのだろう)用に建設されている、としている点だ。彼の中では「常識」となっていて、この論考に記載されていない事実がたくさんあるのだろうが、どうもしっくり来ないのだ。
アメリカではタンクの賃貸マーケットが広がっている、というニュースは読んだ記憶がある。だが、サイズとしてはさほど大きなものではなかった。市況に大きな影響力があるとは思えなかったので、このブログでも取り上げなかったほどだ。
彼のいう “physical oil speculator” とは、どういうグループのことを指しているのだろうか? 関連論考をもっと読んでみないと、彼の真意はわからないのだろうな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年5月28日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。