お笑いだけが知っているビジネスを成功させる話す力

尾藤 克之

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※写真はセミナー講演中の夏川氏。

ビジネスの場において「話す力」の重要性は高くなっています。しかし、ある調査によれば、約8割の日本人は「話すことに対して苦手意識を持っている」とも言われています。

夏川立也(以下、夏川)は京都大学工学部を経て六代目・桂文枝(当時は三枝)の弟子入りするという異色の経歴をもっています。人気テレビ番組「新婚さんいらっしゃい! 」の前説を10年続け、その後も講師としてのキャリアを重ねています。

誰からも必ず「よかった! 」と言われる話し方39のコツ』(日本実業出版社)には、夏川のユニークなテクニックが審らかに語られています。今回はその一部を紹介します。

●3つの必須要素とはなにか

夏川は、うまく話すための要素は「コンテンツ」「パフォーマンス」「フィールド」の3つだと述べています。整理すると次のようになります。

1.コンテンツ(内容)
話す内容を精査し聞き手に響く内容を準備すること。

2.パフォーマンス(表現)
表現能力を高め、より効果的に聞き手に届けること。

3.フィールド(場/空気)
パフォーマンスを発揮しやすい状態に場をつくること。

しかし、「話し方」「スピーチ」に関する本の多くは、これらのどれか1つに偏っているとも述べています。3つの要素のうち、どれか1つが欠けても人前で上手く話せません。しかし、この3つの要素を自分なりに発展させることで、かなりの確率で聞いた人に「よかった!」と言ってもらうことができるそうです。

●場を味方につけるということ

臨場感があふれる話し方も効果的だと述べています。臨場感があふれれば強い印象を与えることができます。落語の寄席を思い出してください。1人で何役もなりきり演じている光景を思い出せばイメージし易いのではないでしょうか。夏川は本書のなかで、話し方やスピーチを次のようにとらえています。

「ふだんの会話は、家の前でキャッチボールをするようなものです。が、人前で話すとなったとたんに大観衆の見守るなか、勝利を求めてバッターに渾身の力でボールを投げ込むピッチャーのような状態になります。」

そのなかで日々のブラッシュアップやトレーニングの必要性についても言及しています。練習どおりの投球をするにはマインドやメンタル面が影響を及ぼしますが、最後に「場」を味方につけることが大切であると。プロ野球でもサッカーでも、ホームとアウェーでは成績に驚くほどの差が出やすいもの。場の空気は、パフォーマンスをしっかり発揮するためのバックボーンになるのです。

「武器となる『コンテンツ』を精査して、『パフォーマンス』を高めるためのコツを知ったうえでトレーニングをして、『場』を味方につけて話すことができるようになれば、観客を魅了してやまないエースピッチャーのように、あなたは間違いなく人前でうまく話せるようになります。」

●最後は「共感」が重要

テレビのバラエティ番組で、誰かのツッコミが入った瞬間に大爆笑というのはよくある光景です。それではツッコミとは何でしょうか?

夏川は「共感」であると答えています。「誰もが思うことを、思うよりも一瞬早く口にすること」です。ツッコミが入った瞬間に少しスベった感があるときは、誰もが思うことを口にできていないか、誰もが思うよりも一瞬早く言えていないかのどちらかです。

一般のケースに置きかえれば「今日は暑いですね」のように共感性の高い言葉になるのでしょう。プロの漫才師でも開口一番「今日は暑いですね」と口にすることはあります。これは共感を得ることで場をプラスに転じているとのこと。お笑い芸人のツカミを知るだけでも勉強になるはずです。

最後に、本書に書かれている夏川の一文を引用し結びとします。「一生懸命に話すためには、一生懸命に準備しなければなりません。一生懸命に準備をしたからこそ、本番で開き直ることができるのです。一生懸命に話したからこそ、『結果はあとからついてくる』と受け止めることができるのです。」

尾藤克之
コラムニスト

追伸

アゴラ研究所、Jディスカヴァーによる著者発掘セミナー(6/14)は好評により満席となりました。次回は7月下旬の開催を予定しています。多数のお申込有難うございました。