米4月個人消費支出は前月比1.0%増と、市場予想の0.7%増を上回った。前月の±0%(0.1%増から下方修正)を大幅に超え、2009年8月以来の高水準を果たす。15ヵ月連続で増加した。前年比は4.1%増と前月の3.5%増を抜け、2014年11月以来の水準へ加速した。実質の個人消費は前月比0.6%増と、市場予想の0.5%増を上回った。前月の±0%から力強く増加に転じた。個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。
・耐久財 2.29%増、前月の0.15%減から増加に反転
・非耐久財 1.44%増、前月の0.37%増を上回り2ヵ月連続で増加
・サービス 0.59%増、前月の0.05%減から増加に反転
耐久財は、新車販売台数が前月の年率1700万台割れから大台を回復したため力強く反発した。非耐久財はガソリン価格の値上がりを支えに、減少トレンドにブレーキを掛けている。サービスは春を迎え人の出入りが活発化し気温も徐々に上昇に転じるなか、増加に転じた。
米4月個人所得は前月比0.4%増と、市場予想及び前月値に並んだ。13ヵ月連続で増加している。前年比は4.4%増と、2015年7月以来の強さをみせた前月の4.6%増を下回った。可処分所得は前月比で0.5%増と、前月の0.4%増を上回り3ヵ月ぶりの高水準。所得が支出の伸びを超えたため貯蓄率は5.4%と、ブッシュ減税終了目前で賞与などが大幅増となった2012年12月以来の高水準に及んだ前月の5.9%を下回った。
個人消費の低迷に反し、個人所得は順調で貯蓄率が上昇。
所得の内訳は、以下の通り。
・賃金/所得 0.5%増、前月の0.4%増と合わせ2ヵ月連続で増加(民間が0.5%増と前月の0.4%増超え、サービスが0.5%増だったほか財生産業に至っては0.7%増とそれぞれ前月の0.5%増、0.2%増を含め2ヵ月連続で増加)。
・不動産収入 0.6%増、前月の0.1%減から増加に反転(農場が0.5%増と前月の横ばいから増加、非農場も0.5%増と前月の±0%から増加に反転)
・家賃収入 0.4%増、前月の0.8%増に続き26ヵ月連続で増加
・資産収入 0.3%増と前月の0.6%増を含め2ヵ月連で増加(配当が0.7%増と前月の0.8%増を含め2ヵ月連続で増加、金利収入は0.1%増と4ヵ月連続で増加)
・社会福祉 0.5%増、前月の0.2%増と合わせ増加基調を維持(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.4%増と6ヵ月連続で増加、メディケア=高所得者向け医療保険は0.4%増と増加トレンドを維持、失業保険は2.5%減と3ヵ月連続で減少)
・社会補助 0.3%増、前月の0.3%増を上回りつつ少なくとも17ヵ月連続で増
米4月個人消費支出(PCE)デフレーターは前月比0.3%上昇し市場予想に並び、前月の0.1%を超えた。前年比は1.1%上昇しこちらも市場予想通りで、前月の0.8%を上抜け3ヵ月ぶりの高水準だった。コアPCEデフレーターは前月比0.2%上昇し、市場予想と一致。前月の0.1%は上回った。コアPCEデフレーターの前年比は市場予想及び前月と同じく1.6%の上昇となり、2014年8月以来の高水準だった2月の1.7%からは鈍化した。コアPCEは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を視野に入れつつ、PCEと含め、「2%」割れはそろって2012年5月以来となる。
大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、結果を受けて「値上がりに加え3月が弱かった反動で、個人消費支出が約6年4ヵ月ぶりの水準へ押し上げられたと判断する向きは多いだろう」と振り返る。もっとも「実質の個人消費自体が前月比0.6%増と好調で、4-6月期の個人消費は幸先の良いスタートを切ったと捉えられる」と指摘。米4-6月期個人消費が3%超えの期待が高く「米4-6月期GDPは3.0%増」と予想した。
アトランタ地区連銀は、米4-6月期GDP予想値を2.9%増で維持した。
――4-6月期が3%成長となれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)が6月利上げを行ったとしても経済指標が正当化する公算となります。問題は、新車販売台数が好調を維持できるかどうか。4月の支出増のコインの裏側に貯蓄率の切り崩しがあり、米1-3月期家計調査でも若干とはいえ自動車ローンの未払い率が上昇していました。企業の設備投資も米4月耐久財受注を見る限り回復の兆しは見えず、足元をすくわれなければ良いのですが。
(カバー写真:elysiumcore/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。