古野真 350.org Japan(NGO)
【GEPR編集部より】
投稿をいただいたので、掲載します。
GEPR・アゴラは、石炭火力は環境面で危険であるものの、現在の原発の長期停止の中で日本が火力発電と石炭使用にシフトせざるを得ないこと。また日本の石炭火力の環境性、そして効率性は世界最高水準でありその技術を活用し、輸出も拡大すべきこと、という有識者の見解を掲載してきました。
参考
日本の石炭技術が世界を救う−火力発電とバイオ、可能性が広がる
またドイツでは、再エネの拡大と同時に、バックアップなどに使われる石炭火力の拡大が現在も進んでいます。下記論考で事実面に疑問を持つ点があります。また下記論考では「日本で金融機関の支援によって石炭シフトが行われた」という趣旨のまとめをしています。日本では電力会社の発電における石炭シフトは、地域供給義務がある中で原発の使用が原子力規制委員会により抑制されたことにより、電源確保のために仕方なしに進んでいる面があります。
ただし日本における発電での石炭の使用について、その削減を目標にした上で、民主的な意思決定に基づく、明確な基準作り、合理的な政策のすりあわせが必要であることは、当然です。それをしなければ日本では、今後も石炭の使用が拡大を続け、大気汚染と温室効果ガスの発生が、拡大する懸念があります。
GEPRの見解とは違う内容ですが、意見の多様性を保つために掲載します。
(以下本文)
G7伊勢志摩サミットに合わせて、日本の石炭推進の状況を世に知らしめるべく、「コールジャパン」キャンペーンを私たちは始動することにした。日出る国日本を「コール」な国から真に「クール」な国へと変えることが、コールジャパンの目的だ。
三重県で行われたG7伊勢志摩サミットを直前に迎え、現在世界中の目が日本の動向に向けられている。
G7が開催される伊勢志摩には日本が世界に誇る文化の象徴、伊勢神宮がある。またそれ以外にも、最先端テクノロジーやユニークなアートなど、日本は世界に誇るべき「モノ」や「文化」で溢れている。
このような「日本の魅力」を日本政府は組織的に世界に発信しており、その中でも代表的なキャンペーンが、経済産業省中心となって進める「クールジャパン」だ。
しかし、果たして日本は本当に「クール」なのだろうか?
あまり知られていないことだが、日本は現在石炭火力発電所を国内に47基新設する計画を進めている。これは他のG7諸国の脱炭素計画に真っ向から逆行する動きであり、石炭推進について日本はG7の中で完全に孤立している。
また、日本は他のG7諸国とは比べようのないほど巨額な公的資金を石炭関連プロジェクトにつぎ込んでいる。その額は2007年から2014年の間に2000億ドルに登る。日本は「クール」より「コール(石炭)」の呼び名の方が、はるかにお似合いのようだ。
近年では、G7の米国、英国やフランスなどが石炭事業への国際的支援に対する規制を厳しくしており、これらの国々は国内でも次々と石炭火力発電所を廃止している。イギリスはすでに完全な脱石炭化を達成しつつあり、アメリカも古い石炭火力発電所を急ピッチで閉じている。その数は過去5年間の間で200以上に達している。
しかし、日本は相変わらず世界一の海外石炭事業推進国として邁進しており、脱炭素化へと進む世界から次第に見放されている。
コールは一切クールではない。
石炭(コール)は自然環境にも人々の暮らしにも壊滅的な影響をもたらす地球温暖化の主な原因である。そして皮肉なことに、日本は気候変動による被害をもっとも大きく受ける国の一つなのだ。例えば、地球の平均気温が4度上昇すると、首都圏でも750万人が海面上昇による被害を受けると言われている。2度の上昇の場合でも420万人分の世帯が浸水すると言われている。
このような深刻な影響があるからこそ、2015年のG7では21世紀後半までに完全に脱炭素化した世界を目指すことが合意されたのだ。さらに、2015年の末にパリで開催された気候変動に関する国際会議では、2050年までに完全なる脱炭素社会を実現することが、世界195カ国により合意された。
言い換えると、温室効果ガスを大量に排出する石炭をエネルギー原として使用することはもはや不可能であり、「石炭にはもう未来が無い」と日本を含む世界が合意したのだ。そして上記の合意を達成するため、世界は温室効果ガスの大幅な削減と、再生可能エネルギーの導入を急速に加速させることが求められている。
一方、世界と結んだ約束とは裏腹に、国内で石炭火力発電所の新設を進め、世界の石炭事業を支える日本は完全に孤立している。しかも、日本は消費する石炭の100%をオーストラリアやインドネシアといった海外から輸入しているのだ。このまま石炭や化石燃料依存を続けると、国はエネルギー自給率を向上できず、また世界経済の不安定性にさらされることになる。
では一体、何が「コールジャパン」を支える原動力となっているのか?
その答えはすばり「お金の流れ」である。日本の公的金融機関や民間銀行、または機関投資家が運用するお金が、大手一般電力会社などへと流れている。これらの企業は自らの利益を守るために、再生可能エネルギーの導入や成長を、あらゆる手を使い抑えているのだ。
去年私たち「350.org Japan」が行った調査により、日本のメガバンクグループ(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友銀行、三井住友信託銀行)が化石燃料や原発に関わる企業へ巨額な投資や融資を行っていることが明らかになった。2014年度での投融資総額は、なんと5兆3890億円にまで登った。
同報告書により、日本の生命保険会社も化石燃料・原発関連企業に約4兆3千億円の投資を行っていることが明らかになった。
しかし、同時に希望の光が差し込んでいるのも事実である。日本の金融と環境技術の力を持続可能なエネルギーに集中させれば、日本は必ず自然エネルギーの世界的リーダーになれる。日本では毎年約200億米ドルが新たな自然エネルギープロジェクトに投資されており、これにより年間800万キロワット(kW)の新たな電源が供給されている。これまでなんども大きな改革を成し遂げてきた日本は、世界の先を行く環境大国に成り上がるポテンシャルを十分に秘めている。
G7 が間近へと迫る中、日本は選択を迫られている。「コール」を選ぶのか、それとも「クール」を選ぶのか。世界は私たちの答えを待っているのだ。
350.org Japanは日本も正しい方向へと導くために、「#DivestJapan」キャンペーンを通して、日本の市民、銀行、生命保険会社、年金基金や公的機関が化石燃料や原子力に関わる企業から「ダイベストメント」(=投資撤退)をするよう呼びかけている。そして、ダイベストメントして引きあげた資金を、持続可能な開発を支える自然エネルギーなどへ転換することを提案している。詳しい情報は公式ホームページにてご覧ください。
現在のお金の流れを持続可能な開発へと転換できれば、私たちは真に「クールジャパン」として世界から賞賛されるだろう。