国会の閉会と、小さな種火

松田 公太

1月4日から始まった第190回通常国会が昨日閉会となりました。

アベノミクス、消費税増税、軽減税率、公務員給与法、再処理等拠出金法、企業団体献金の禁止(政治と金の問題)と様々な議論が行われました。思い通りにいかない事ばかりでしたが、小さな政党ながらもすべての政策・法案に真正面から取り組み、是々非々のスタイルを貫き通せたと自負しています。

例えば再処理等拠出金法(核燃料サイクル法)。
経済産業委員会の採決で反対をしたのは我々と新党改革、そして共産党だけでした。

この法案は、使用済み核燃料の再処理及びMOX燃料加工のための拠出金を電力会社から否応なく入り続けるようにするため(核燃料サイクルから抜けることをできなくするため)に提出されました。マスコミ報道はあまりなかったのですが、実は極めて重要なものだったのです。

今国会、経産委員会付託案件の中では、核燃料サイクル法は、FIT法(再生可能エネルギー固定価格買取制度に関する法律)とともに、「登壇もの」(最初に本会議で趣旨説明と質疑が行われる大事な法案)と位置付けられていました。

しかし、委員会の場では、FIT法には参考人招致も行い時間をかけたのに対し、核燃料サイクル法は短時間しか審議されず、たったの一日で処理されました(私が頂けた質問時間は20分でした…)。論点の多さや国の未来への影響を考えれば、核燃料サイクル法の方こそ時間をかけて丁寧に議論をすべきだったです。

その(本当の)理由は、「国民の目に付く前に早くさっさと通してしまいたい」という与党の思惑と、「本来は反対したいところだけど、電力会社の組合から睨まれるのが嫌なので賛成せざるを得ない。同じく国民の目に付く前にさっさと通してしまいたい」という野党第一党の考えが一致し、審議時間を短くすることで合意したからです。

他の野党議員はといえば、政策に対する信念ではなく、「自民党に睨まれないように歩調を合わせる」か「民進党に睨まれないように歩調を合わせる」かという判断基準で賛否を決めてしまったという印象です。

今回、特に残念だったのは、あれだけみんなの党時代に「核燃料サイクルは反対だ!すぐにワンススルーに移行するべきだ!【アジェンダ(政策集)で「核燃料サイクル計画を廃止し、使用済み核燃料を直接処分する」と明確になっていますし、主要論点と位置付けて全員が反対してきました)】と叫んでいた仲間たちがやすやすと信念を曲げたことでした。

自民党会派に入ったため、もしくは入れてもらいたいがために、堂々と「賛成」票を投じた人。
民進党会派の一員として「賛成」にまわった人(民進党議員の中には採決を棄権した方もいましたが)。
そしておおさか維新のメンバーとして「賛成」した人・・・。

本気で闘っていると思っていたみんなの党の旧仲間たちが、何の説明もなく、真逆の政策に賛成票を投じている姿をみて、唖然としてしまいました。

また、「脱原発」をうたっている人たち(もしくは政党)が、この核燃料サイクルに賛成したことも、矛盾していると言わざるを得ません。

つまり、『原発を使っていくのは賛成だが、それはワンススルー(直接処分)という条件付きで。核燃料サイクルには反対』なら筋が通りますが、今回の賛成票を投じた政党や議員は『原発は廃止するべき』と言いながら、それ以上に大きな問題である『核燃料サイクルには賛成』と言っている人(政党)が多くいるわけです。

原発は核燃料サイクルなしでも成り立ちますが、核燃料サイクルは原発(軽水炉、高速増殖炉)なしでは成り立ちませんので、脱原発を訴えながら核燃料サイクルから抜け出せなくなる法律に賛成するのは支離滅裂です。

以前はこのような法案に対し、しがらみなく筋を通すのは「みんなの党」しかありませんでした。
やはりその精神を引き継いでいるのは我々元気会だけになってしまったのでしょう。

この「真の是々非々」の小さな種火を消さずに、引き継いでいくにはどうするべきか。
昨日の閉会日を含め、日々それを考えながら過ごしています。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。

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