日本のマスメディアは今朝、「OPEC、生産目標見送り、協調体制の模索続く」(日経)、「増量凍結見送り、原油価格底打ちが影響」(朝日)、「OPEC総会 生産目標など合意せず」(NHK)と、揃って「凍結を含む生産目標に合意できなかったこと」を報じた。「生産水準」が議題とはなっていなかったことは既に報じられていることなのだが、人々の関心はこの点にあるようだ。
ではFTはどう伝えているのかとチェックしてみたら “OPEC resists output cap with oil over $50” (June 2, 2016 6:51pm) というタイトルになっている。読んでみると、議題に上ってはいなかったが、国家財政が破綻状況にあるナイジェリア、ベネズエラなどの要求があったことは事実のようだ。だが、FTはさらに詳しく内情を伝えており、非常に興味深い。ぜひ読者の皆さんは原文を読んでいただきたい。
筆者が興味深く読んだのは、イランとの対決をあからさまにして「サウジが増産を目指す」ことがなかったことに言及している点だ。モハマッド副皇太子の「石油政策」の「思想」が見えないだけに、この点は不安だった。
FTは、前2回の総会と比べると友好的で、前回失敗した「事務局長人事」も合意できた、と伝えている。
さて、ではOPECそのものはどのようにコミュニケで伝えているのだろうか?
ネット検索をすると、すぐに見つかった。一読してみると、要点は次のようになっている。
1.まずは、ファーリハ新エネルギー大臣の歓迎と、ナイミ前石油相の20年間にわたり絶大なる貢献への賛辞から始まり、今回を最後に任から外れるエクアドルの代表に謝辞を送り、さらには4月16日の大地震で多大なる被害を被ったエクアドル国家と国民に深甚なる哀悼の意を評している。続いてイラクの新たな代表を歓迎(ここまではプロトコールとおりだろう)。
2.「ガボン」の再加盟を承認。
3.続いて、事務局長および経済委員会の報告を検討した、として次のように報告している。
・(地球温暖化対策の)パリ協定を歓迎する。
・非OPECの生産量は、2016年には76万B/D減少するだろう。すでに昨年のピークから100万B/D以上の減産となっている。
・一方、世界の需要は、2015年に150万B/D増加し、2016年はさらに120万B/D増えると見込まれる。
・価格は、前回の総会(2015年12月)より80%以上、上昇し、需給はリバランスへの過程にある。
・だが、OECD/非OECDの在庫は、過去5年平均より極めて高い水準にあり、正常な水準に減少することが必要だ。
・一方で、上流部門への投資は激減しており、長期的に市場がバランスするためには更なる投資が必要だ。
・市場の安定化と産油国の適正かつ持続的な収入確保、消費国への安定的供給のために、OPECメンバー間のみならず、非OPEC産油国との協調が重要。
・事務局は、市場の動きをモニターし、必要に応じメンバー各国へ報告し、再度会合を開き、OPECとして必要な手段を取る。
4.ナイジェリアのMr. Barkindoを2016年8月1日から3年間、事務局長として任命。
5.次回総会は、2016年11月30日にウィーンで開催予定。
はてさて、市場はどちらに動くのか。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年6月3日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。