アメリカ大統領選、私感

アメリカの大統領選はクリントン氏対トランプ氏がほぼ確定したような感じがします。サンダース氏があきらめない姿勢は評価します。が、彼が頑張れば頑張るほどトランプ氏を利する気がします。

さて、「好ましい」から「好ましくない」を引いた好感度指数はトランプ氏がマイナス33、クリントン氏がマイナス21で近年では圧倒的に不人気の二人であります。多分、お二人ともテイストが強いので好きな人は好き、嫌いな人は体質的に受けつけないということかと思います。

それを言うならペルーの大統領選でケイコ フジモリ氏とクチンスキ氏の間で猛烈な接戦が良い例でしょう。大統領の候補が4万数千票程度の差で争うということはそれだけ国家を二分するほどの国民感情のわだかまりがあるとも言えます。先日のオーストリアの大統領選も50.3%対49.7%という僅差でありました。かつても激しい争いは多く見られましたが、最近その傾向が目につくのはなぜでしょうか?

ペルーの選挙の場合、お二人の候補者は中道右派と右派で政策は非常に似たものだと思います。唯一の分岐点はケイコ氏の父、アルベルト氏の評価であります。彼のことを英語でstrong manと評しているものもありますが、その意味はそれぐらい強権をもってペルーの安全や治安対策に立ち向かっていったこと、一方でそれが逆に命取りになっているともいえます。

どちらが大統領になっても困ることは約半数が不満をもって新しい大統領を迎え入れなくてはいけないことでしょう。オーストリアの場合は左派に対して極右で移民排斥をうたう候補者との戦いでした。この場合は国政のかじ取りはもっと難しくなるでしょう。

ではアメリカ。議会は上院、下院とも共和党が押さえます。が、大統領は民主党出身。それゆえの長いレームダック政権と言われたオバマ大統領はその任期の後半ではレガシー的な外交的行動を行なったものの内政に関しては実に苦しい時期を過ごしたと思います。その一方でオバマさんの時代の経済は決して悪くなかったその意味は経済は民間主導で自助機能があった、ということでしょうか?ある意味、政治的インパクトがなかったからこそゆっくりながらも景気の回復を享受できたとも言えそうです。

さて、そのアメリカの大統領選、私が描くピクチャーはどちらになってもそれ以上悪くはならないだろう、という印象です。これほど期待値が低い大統領はある意味、ハンディキャップ36を貰ったゴルファーが「今日は調子が良くて」100ぐらいで回って優勝するようなものです。ゴルフで100を叩くのは決してうまくはないけれど優勝できるその意味はハードルが低いから何かやればプラスに作用しやすいということ。では、120を叩くこともあるだろうとおっしゃる方もいると思いますが、超大国の大統領は優秀なキャディ(=ブレーン)を相当抱え込みます。一定のバランス感覚は持たざるを得ず、放言、暴言が何時までもできるわけではないでしょう。

次期大統領は一国のトップと同時に外交デビューもするわけですから世界の国々とのスタンスをどう設定するのか、これがアメリカの評価にもつながります。悪態を続ければ国債を買ってもらえない、政策的な孤立感を味あう、アメリカの影響力の低下、世界の国家間のバランスの崩壊など様々な影響が出てきます。それは国内向け政策と同じぐらい重要、かつ、政治経済社会への影響力は甚大なものとなります。

トランプ氏の場合は口が災いする可能性があるのが懸念材料です。その失言に気が付き、取り消すこともしばしばありましたが(ローマ法王との一件など)候補者ならば許されても大統領となれば致命的問題となることはリスクファクターとして捉えておくべきです。

一方、クリントン氏は安倍首相ではありませんが、「新しい判断」が次々生まれそうな気がします。クリントン氏も使えば流行語大賞、間違いないと思います。彼女はそれぐらい言葉に対する信頼感が薄い点は留意した方がよいと思います。特に対中国では高い確率で「すり寄る」と思われます。中国はクリントン氏のツボを抑えているようにみえますので彼女が大統領になれば大変好都合で東シナ海の問題もどっかにすっ飛んでしまう可能性があります。

では北朝鮮の金正恩党委員長に会う用意があると述べたトランプ氏は日本の味方になるのか、ですが、プラスの部分とマイナスの部分で相殺されそうな気がします。プラスの部分は両国間の関係が改善する余地があること、そしてディール巧者のトランプ氏ですから飴と鞭をうまく使い分けると思います。金正恩氏は少なくとも喜んでいるようですから「構造的問題」でデッドロックに乗り上げているこの案件が何らかの形で動くことには期待できるでしょう。

好ましくないお二人のどちらに一票か、といえば弱くなりつつあるアメリカを足腰から鍛え直せるかもしれないトランプ氏にやはり期待してみたいのが外部の人間の想いであります。

ただし、選ぶのはアメリカ国民。そして体質的に受け付けず半分の人は「アメリカに未来はない」と国民があきらめることが一番怖い、そんな気がいたします。この選挙も大接戦が繰り広げられるかもしれません。

選挙まであと5カ月、それにしても長い選挙戦であります。クリントンさんの健康状態、大丈夫なのでしょうね?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月12日付より