さる6月8日、JR東日本は千駄ヶ谷・信濃町・原宿の3駅の改良計画を発表した。その中で、原宿駅は、2020東京五輪の競技会場となる国立代々木競技場の最寄り駅でもあり、混雑緩和のため駅舎を建て替える計画(JR東日本HPより)となっている。
原宿駅は大正期に建設された都内最古の木造洋風駅舎であり、「保存して欲しい」との声が多数出ている。ここでは、歴史的建造物である駅舎を建替えることなく、低コストに現行の混雑を解消し、かつ利便性も向上する方策を提案する。
原宿駅は、1日平均乗車人員7万人と山手線の駅では29駅中21位と少ないにも関わらず、ホーム・階段・コンコースともに狭く、週末を中心に混雑が激しい。トイレの混雑は相当なもので、うんざりした人も多いだろう。このまま2020東京五輪を迎えるのは決して好ましくない。
計画では、年始のみに使われる臨時ホームを外回り、現行ホームを内回り専用とし、渋谷駅と同じ形態とする。これにより、ホームと階段の混雑は大幅に緩和される。さらに、外回りのホームと線路の上空にコンコースと大きなトイレを新設し、それらの混雑も緩和される。駅機能は全て新設部に移行して現行の駅舎とコンコースは機能停止し、駅舎の保存・解体は渋谷区と相談しながら決めるという。
それに代り、現行施設は全て使い続け、ホームは2つとした上で南端に階段を新設し、線路を渡る神宮橋と結んで改札口を新設することを提案する。大きな駅舎は設けず、できれば、自動改札・券売機・精算機・遠隔監視カメラ・話のできるモニターを設置し、駅員は無配置とする。エレベーター・エスカレーター等は設けず、それらが必須の方は現行のルートを使って頂く。
それにより流動が分散し、コンコースの混雑を解消できる。競技場方面とは近道となり、より便利になる。トイレは外回りホーム上に設置する。年始限りの臨時改札口はホーム幅より明治神宮側へはみ出しており、トイレも同様にすればよい。
改札口は、神宮橋に直接設置できるのが最も便利かつ安上りだが、欄干の一部を取壊すことへの反対が強い場合は、明治神宮側に設置する。また、計画にある駅施設・店舗等と表参道口は、現行施設を使い続けるので不要だ。
3駅の改良の工事費総額は250億円と発表され、原宿駅は100億円以上と思われるのに対し、上記の提案はその数分の1で済む。制約が厳しく工費のかさむ線路上空への床確保が最小限となるからだ。
東京圏にはホーム長200〜300mで改札口が1つか2つの駅が多い。目白駅のように改札口が北端にしかないと、南端付近の出発・目的地とホームを行き来するのに400m以上も余計に歩くことになる場合もある。
新改札口にバリアフリー設備があった方が好ましいが、不要とすると工事費が大幅に下がり、改札口の新設が進み鉄道全体を利便向上できる。バリアフリー設備が万全で30億円の新改札口を1つ作るより、バリアフリー設備を省略して10億円の新改札口を3つ作る方が得策だと提案したい。
原宿駅の計画見直しをその第1号とできないものだろうか。
阿部 等 株式会社ライトレール代表取締役社長
東京大学工学部都市工学科大学院修士修了。JR東日本(第1期生)に17年間勤務。鉄道事業の多分野の実務と研究開発に従事。その後、交通問題の解決をミッションに株式会社ライトレールを起業。交通や鉄道に関わるコンサルティング・研究開発に従事。
※写真はPHOTO ACより(アゴラ編集部)