【映画評】貞子VS伽椰子

貞子VS伽椰子 (角川ホラー文庫)
女子大生の有里は、偶然手に入れた古いビデオデッキに入っていた、見たら2日後に必ず死ぬという「呪いのビデオ」を手にする。一方、女子高生の鈴花は、引っ越し先の向かいにある「呪いの家」に入ってしまう。2つの呪いを解くために、霊媒師の経蔵と、経蔵の相棒で生まれながら強い霊感を持つ盲目の少女・珠緒は、貞子と伽椰子を激突させ、同時消滅させるという驚くべき計画を立てる。有里と鈴花に呪いの家で呪いのビデオを見るように指示するが、それは想像を絶する戦慄の事態の始まりだった…。

 

Jホラーを代表する最強ツートップである貞子と伽椰子がまさかの初共演となった「貞子VS伽椰子」。きわもの企画かと思っていたが、見てみたらこれが意外にも良く出来ている。そもそもシリーズものというのは回を重ねるごとに劣化するもので、「リング」も「呪怨」も、続編の質はヒドいものばかりだった。そこに、映画会社の枠を超えた、いわば超党派で、貞子VS伽椰子とは!絶叫ヒロインの2人は、おびえる表情も美しい美女たちなのはお約束通り。脇キャラが見事にたっているのもいい。心霊研究に入れ込んだあまり貞子に呪われて喜んでいる、都市伝説の研究家兼大学教授役の甲本雅裕、安藤政信が演じる霊能界の異端児の霊媒師の乱暴な態度、美少女なのに「ヒメノア~ル」に引き続きトンデモないメにあいながら熱演する佐津川愛美など、ことごとくいい味で、思わず微笑ましくなってしまうのだ。

問題は、貞子も伽椰子もあまりに“おなじみ”すぎて、さっぱりこわくないことである。クライマックスのびっくり仰天の展開は、怖いというより、あきれるやら、感心するやら。どーんとでてくる“それ”に思わず「たまや~っ」と呼び掛けてしまいそうになった。「フレディVSジェイソン」、「エイリアンVSプレデター」、最近では「バットマンVSスーパーマン」と、映画界ではライバル対決が大流行だ。日本映画としても、このトレンドに乗らないテはない。
【65点】
(原題「貞子VS伽椰子」)
(日本/白石晃士監督/山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、他)
(恐さ度:★★☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。