橋下さんも注目?英EU残留派PR戦術、痛恨の失敗

新田 哲史

どうも新田です。きのうアキバでおおさか維新の18歳選挙権PRイベントにゲスト出演したのですが、興味深かったのが松井代表の話。昨年、大阪の住民投票で敗れた維新もやはり今回のイギリスの国民投票には大いに注目しているようで、すでに分析を始めており、橋下さんが現地を視察するんだとか。

え〜と、「党首でもない法律顧問の橋下さんがなぜわざわざ渡英するんだよ」などという下世話な政局的観測をする貴殿は静粛に。(追伸21:45;どうやらテレ朝の番組企画で既に取材に行ったようです)

おおさか維新が分析する英国民投票の離脱要因

それは、さておき、その際、松井さんが赤提灯時事放談よろしく分かりやすく指摘していた投票結果の要因が「EU残留派が離脱派に対して説明をしきれなかった」。これは、ユーロの経済圏から離れることでイギリス経済の悪化を招くというのが「EU離脱シナリオ」だったわけですが、結局、残留派は不安を煽っただけで、離脱派からの「現実的には現行紙幣はポンドのままでそんなに悪くなっていない」といった反論に抗しきれなかったと維新では見ておるようでした。

維新は大阪の住民投票では敗れたものの、自民から共産まで在阪の他党すべてを敵に回し、投票直前の世論調査で苦しい情勢が伝えられていたにも関わらず、あと一歩まで巻き返すことができたのは、東京では意外に知られていない足元の地方議員さんたちのグラスルーツなドブ板組織がフル回転で機能し、それプラス、大量の広告費をぶちこんで、在阪の某有名広告代理店が洗練されたクリエイティブ、メディア戦略・戦術を展開するという秀逸なキャンペーンをうまく組み合わせたからだと考えます。

専門メディアに「破滅的失敗」と断じられたPR戦術

まあ、私は欧州政治なんてものは全く門外漢ではありますが、新聞記者を辞めてから企業広報や選挙キャンペーンの仕事にコミットしてきた経緯から、PR視点で今回の国民投票にそれなりに興味はございました。ただ、残念ながら私は英語がからきし出来ず海外旅行も極力行きたくないドメドメな人間なわけですが、ちょうど維新さんのイベントに出かける直前に、メディアイノベーションの英訳をやっている「DON」管理人のTakosaburou 氏から現地広告業界メディアの面白い記事と邦訳メモをご提供いただくという幸運ぶり!ひゃほーい。

そういうわけで、Takosaburouさんの許可を得てご紹介しますと、出典は広告マーケティングメディア「campaign」のこちらの記事になります。

Brexit vote shows catastrophic failure of communications

The referendum result is a story of many parts but one of them is certainly the catastrophic failure of the communications industry to mount a coherent and powerful pro-EU message.

えーと、いつもの私ならここで諦めてしまいますが、今回は邦訳メモがあるので安心。はい、私と同じで全く英語ができない方のためにどうぞ。

Brexitの投票結果はPR戦術上の破滅的大失敗に他ならない

国民投票の結果は、様々な見方があろうが、確実に言える事がある。それはPR業界が理路整然と力強い親EUメッセージを発する事が出来なかったとなる。破滅的とも言える大失敗なのだ。

お、おう…私なぞ逆立ちしてもできない、こなれた訳だ….(汗)

キーラ・ナイトレイの“煽り”もダダ滑り

それはさておき、広告世界最大手WPPグループの代理店が残留派のキャンペーンを手掛けていたようなんですが、代理店の一つが作ったこの「#Don’t fuck my future」という動画。えーと邦訳すると…….(ダメだ、メモをカンニング……..)さしづめ「#私の人生をメチャメチャにしないで」といったところでしょうか。

動画のお姉さんは、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」でおなじみ(らしい。。。見たことない)の女優、キーラ・ナイトレイさん。英語ができる人なら彼女が何を言っているのかわかると思うんですが、私のように英語が全くわからない人から見ても、「fuck my future」などと挑発的なメッセージがなにかピンと来ないのは、なんでしょうかね。

キーラ・ナイトレイ

上記の松井さんの話も合わせて考えると、残留派は残留することによるメリットを説得力ある形で、かつポジティブに語れなかったんじゃないのかな、という直感がして、「恐怖マーケティング」メインの打ち出し方では不発だったんじゃねーの、という気がしてくるわけです。もちろん米大統領選等で「恐怖マーケティング」の成功例はありますが、今回の国民投票キャンペーンに関する現時点での総括として、記事はこう締めくくっておるようです。

The mighty collective power of the UK’s £20bn advertising industry – which has been united in its support for Remain – has failed to find the compelling messaging we so desperately needed. Shame on us.

はい。邦訳。

2000億ポンドとされる英国の広告業界の力強さを以てしても、残留せずにはいられないような思いにするメッセージを発せられなかったのだ。広告業界の多くが残留を望んでいたにもかかわらず。そうしたメッセージを乞い願ったにもかかわらず。本当に恥ずべきだ。

「Shame on us.」を「本当に恥ずべきだ」と意訳に、業界関係者の痛恨がにじみでているわけでありますが(受験英語上がりの私には訳せません。。。汗)、「残留せずにはいられないような思いにするメッセージ」はどうすべきだったのか、私なぞと違い、英語が得意な本邦の広告PR関係者の書き下ろした宣伝会議等の記事が出てくるでしょうから、その折には襟を正して拝読したいと思います。

あるいは、卓越した社会評論家や文明論的な視点に立つ作家の先生あたりからは、「時代を動かす大衆の力にマーケティングは対抗できない」なんていう斬り方もされるんでしょうかねえ。

なおPR関連では、下記の記事も書いておりまする。お時間があればご覧ください。

「あ〜、英語なんか嫌いだ、ばーか。翻訳コンニャク、欲しいよ、ドラえもん〜」と嘆く、のび太な気持ちなこの頃です。

doranobi

ではでは。