参院選のなかでも東京都選挙区(改選数6)には最多の31人が立候補している。定数の5倍以上の候補者が競い合う激戦区である。このなかで異彩を放っているのが「支持政党なし(略称:支持なし)」(以下、同党)である。以下の掲示板の写真は昨日(6月27日)に撮影したものだが、異彩を放っていることがご理解いただけるだろう。
6/27筆者撮影
本来、選挙掲示板には候補者は届出順以外のところに張った場合は違反となる。通常は、告示日(公示日)の朝から立候補の届出が始まり選挙用ポスターを掲示する番号が決定される。同党は23番~26番までの連番による届出番号を取得済みであった。もちろん正規な届出として受理されている。
●同党が注目を集めたのは2年前である
まず、政党名に関しては公職選挙法によって定められているが、公序良俗に反するような名称でないことや、既成政党とかぶらないこと、候補者の氏名を連想させないものであれば特段の規制はない。
同党は2014年12月14日に実施された第47回衆議院選挙で比例北海道ブロック(定数8)で、全体の4.2%にあたる10万4854票を獲得している。議席獲得には至っていないが社民党(5万3604票)、次世代の党(3万8342票)を大きく上回る得票を獲得し話題になったので覚えている人は多いだろう。
「『選挙ポスター』に関する意識調査(パイプドビッツ、読売IS)」によれば、投票に行く人ほど選挙ポスターを重視する傾向にあるそうだ。「投票先を決める際、選挙ポスターをどの程度重視するかたずねたところ、『とても重視する』6.1%と『やや重視する』19.3%をあわせて25.4%、4人に1人が重要な情報源として認識していることが分かりました」(原文ママ)。これは露出度やインパクトなどの印象が影響を与えることを意味している。
これを書籍のマーケティングの視点で考えると興味深い。既に31枠のうち4枠を同党が抑えている。書店であれば「面陳」という本棚に表紙を正面に向けて陳列する方法で約13%のスペースを占有していることと同じである。しかも4面連番であるから「多面陳列」である。しかも、選挙掲示版の端(端っこ)部分を抑えている。これは業界用語で「エンド」といわれている箇所である。書店で「多面陳列」をされ「エンド」に置かれる本とは、売れ筋の本のみであり特別な場所として認識されている。選挙ポスターを目立たせるという観点で考えれば既に他党を圧倒しているのである。
●政党支持率のアンケート調査が変わってきた
2年前の第47回衆議院選挙以前は、世論調査で支持政党のアンケートをとる場合には既成政党以外は「支持政党なし」という項目でほぼ統一されていた。その後、様々な影響を鑑みて「支持政党なし」から変更しているメディアが多い。ご関心のある方は、以前の新聞などの世論調査と現在のものを比較されると分かりやすい。しかし統一されているわけではない。
参考までに、直近(6月)の世論調査を調べるとNHK33.9%(特になし)、日本テレビ35.7%(支持している政党はない)、報道ステーション26.0%(その他)、JNN43.5%(支持なし)となっている。同党の略称は「支持なし」であることから、JNNの調査結果を見る限り、同党の支持率は、自民党(34.8%)をも上回っているようにも見える。各メディアとも既成政党以外は共通表記が望ましいのではないだろうか。
尾藤克之
コラムニスト
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