ラジオを電波利用料で救済する愚策

山田 肇

昨日に引き続き、今日は総務省の行政事業レビュー公開プロセスに参加した。

三つの事業について検討したが、もっとも問題だったのは無線システム普及支援事業(民放ラジオ難聴解消支援事業)である。都市部でもビルが邪魔するために、最近はAMラジオが聞きにくい。山あいはもともと聞きにくかったし、日本海側を中心に外国波の混信もある。そこで、FMで再送信して難聴を改善しようという事業である。

大震災などの災害時にはラジオは重要だとして、電波利用料を財源に民放ラジオが補助されるという。営利事業である民放を支援することへの疑問を複数の委員が繰り返したが、総務省は国土強靭化の一環であるとして一歩も譲らなかった。僕は、そもそもラジオを持っていない世帯が多いと指摘したが、なんと(!)これからラジオの普及を図るそうだ。総務省の姿勢は委員を納得させるものではなく、公開プロセスの結論は事業の抜本的見直しとなった。

地上波テレビをデジタル化する際に、テレビ局に対して電波利用料から補助金が出た。今度はラジオ局を救うという。しかも、2018年度終了の事業なのに、補助総額に目途が立っていない。駆け込みで補助申請が出るかもしれないというのが理由だが、予定されている分だけでも50億円を超える巨費が投じられることになっている。放送の自由を守れと大騒ぎするが、補助金をもらうことにはためらいがないとは、マスメディアは節操がない。

無料WiFiに執念を燃やすよりも

観光・防災Wi-Fiステーション整備事業は、観光地の公共施設と各地の避難所にWi-Fiを設置するというものだが、全く異なる目的の二つを一つの事業としているのは理解できない、というのが委員の総意だった。これも抜本的に見直すべきという結論になった。

WiFiステーションが増えていくにつれて、混雑もひどくなっている。WiFiは免許不要帯という特別の周波数を使用しているのだが、ここを拡張しないと混雑は緩和しない。対象事業自体に関わることではないので公開プロセスとしての結論が出たのち、無料WiFiに執念を燃やすよりも免許不要帯の拡大に動いてほしいと、僕は総務省に要請した。

最後は、新たな広域連携の促進に要する経費である。人口減少が進み地方公共団体はますます疲弊している。そこで、中核都市を中心に圏域での連携を促進しようという事業である。今はモデル事業の段階なので、その成果を、失敗例を含めて、広く全国に伝えていくのが重要という結論になった。