ダッカでの襲撃事件

バングラデシュの首都ダッカで発生した飲食店襲撃テロによって、日本人7人を含む20人が犠牲となりました。お亡くなりになられた方々に対して心から哀悼の意を表しますとともに、負傷された方々にお見舞い申し上げます。

私は隣接国のインドとミャンマーにはビジネスと視察で何度も訪れたことがありますが、バングラデシュには入国したことがありません。しかし、シンガポール在住時に成長期待度が高く話題の的になっていたダッカに関心があったこともあり、今年~来年に訪れる国の一つとしてリストに入れていました。

第一報にふれたとき、2008年11月にインド・ムンバイで起きたイスラム系過激派による連続テロを思い出しました。ちょうど私がタージマハルホテルに宿泊した数日後に起き、166人が犠牲となった事件です。犯人は、ホテルを襲撃した際、米国と英国のパスポートを持った宿泊客を探し出し、狙い撃ちしたと報じられています。

亡くなった方の中には私が通っていた和食レストランの従業員も含まれていましたが、狙われたのではなく、不運にも巻き込まれてしまったそうです。そして、その中には日本人も1人含まれていました。

今回のテロにおいては、実行犯がバングラデシュ人には丁重で、コーランの一節を暗唱できるか1人ずつ尋ね、できた人質は難を逃れたとの証言や、「Don’t Shoot! I am Japanese!」(撃たないでくれ!私は日本人だ!)との叫び声が聞こえたとの情報があります。

IS系メディアが既に犯行声明を出していますが、なぜダッカにあるベーカリーレストランが狙われたのか等の詳細はまだ判明していません。

外国人が多そうなところを狙ったのは間違いないと思いますが、襲撃前には状況を目視で確認しているはずですから、客の多くがアジア系(日本人)だったと認識できたはずです。それを意に介さず実行したのか、認識して狙ったのか。「たかがテロリストなんだからそこまで分かっていない」と甘く考えず、しっかりと情報を収集し、分析する必要があります。

昨年、私は、安倍総理に「軍事行動を取っている国を支援することで日本国民に対するテロのリスクが増大してしまう可能性がある」という質問をしました。集団的自衛権を含め、「旗を見せる(show the flag)」ということは、平和ブランド力が低下し日本人がターゲットになるおそれが高まることを意味しているからです(今回をそうだと断定しているわけではありません)。

しかし、残念ながら、安保法案の審議においてはメリットばかりが強調され、デメリットについては十分に議論されませんでした。そのため、国民の多くは、どんなマイナス面があるのか認識しておらず、何に気をつけたらいいのかも分かっていません。

この度の事件について北岡JICA理事長は、「起こった場所は大使館にも近く、普通に考えれば安全なところだった」と記者会見で語っていましたが、状況は大きく変わってきています。早急に、安全性の再確認が必要です。

また、外務省も、常に正確な最新情報を提供できるよう体制を強化していかなければなりません。

海外にいる皆さんは、ご自身やご家族の生命・身体・自由・財産を守るため、国からの発表などをしっかりチェックし、これまで以上に注意を払ってお過ごし下さい。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会)のオフィシャルブログ 2016年7月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。